年中行事から見る、台湾のミャンマー街で感じるミャンマーらしさ



MRT南勢角駅の近くには通称ミャンマー街と呼ばれる通り「華新街」があります。多くのブログなどで”台湾じゃないみたい”、”異国感を味わえる”などど評されるミャンマー街ですが、どんなところから異国情緒を感じるのでしょうか?

突然現れるビルマ文字?店頭に並ぶ食べ物でしょうか?それとも住民が話す聞きなれない言語?

今回は見た目で分かりやすい年中行事から、ミャンマー街にあるミャンマーらしさを探していこうと思います。




ミャンマー街ってどんなところ?



新北市中和エリアにある華新街は『ミャンマー街』と呼ばれていますが、ここの住人は実は主にミャンマーに居住していた華人です。

ミャンマー街形成の詳しい歴史については下の記事にまとめています。

前回の記事



ではなぜミャンマーに暮らす華僑は台湾へ移住してきたのでしょうか?原因は政治、経済、教育の三点です。

およそ1960年代からミャンマーでは排華政策が始まりました。多くの華僑商人は自分の店が国有化となる”收舖子”により経済的に打撃を受けたほか、幾度に渡る紙幣の廃止”大票變”による損失、65年には中華系の教育機関が公式に運営できなくなるなど、身分証を持たない華人にとって不利な環境となっていました。

そのため現地で暮らしていた一部の華人たちは台湾をはじめ、他の国へ移民を始めました。台湾では、当初家賃が安かったことと、工場など働く場所が多かったことから、新北市中和エリアが選ばれたと言われています。

ミャンマーは国土は日本の約1.8倍。多民族国家であり、135もの民族が暮らしていると言われています。

ミャンマー国内で華人が多いのはヤンゴン周辺と、中国の雲南省と接しているシャン州周辺です。この華人の分布が、台湾のミャンマー街の人口構成にも反映されています。

基本的には海ルートでミャンマー南部に移住したのは福建・広東系華僑で、陸ルートでミャンマーの北部(主にシャン州)に移住したのが雲南系華人や雲南の少数民族です。



台湾のミャンマー街には福建・広東系、雲南系の3グループが暮らしています。


台湾のミャンマー街で行われる年中行事

上述の通り、華新街に暮らすのはミャンマーのマジョリティーであるビルマ族ではなく、中国にルーツを持つ華人です。

しかし数世代に渡ってミャンマーで暮らしていたためか、ミャンマーの年中行事や宗教的な行為などを受け入れ、華新街では自身の文化として実践している様子を目にすることができます。

むしろミャンマーの文化を自身のアイデンティティーとして積極的に選択している、という感じすらします。

潑水節(水かけ祭り)

ミャンマーの代表的な新年のお祭りである水かけ祭り(ダジャン または ティンジャン / သင်္ကြန် / Thingyan / 潑水節)ですが、台湾のミャンマー街では1998年から公式に行われています。

太陰暦で計算されるため、毎年日にちは変わりますが、台湾では毎年4月の二週目の週末に水かけ祭りのイベントが行われます。



2019年の水かけ祭りの様子です。この日は地元住民だけでなく、台湾人・外国人観光客の姿も非常に多く見かけます。普段は車両も通行する道路を封鎖し、水鉄砲で水を掛け合う人々で溢れます。

水をかけ合うだけでなく、当日はステージでミャンマーの音楽やダンスも披露されるほか、文化体験ができるテントエリアや祈祷を行うための宗教的なコーナーも設置されます。


2020年は新型コロナウイルスの影響で、水かけ祭りのイベントは中止となりましたが、代わりにオンラインでのゲームや抽選などのイベントが行われました。


このオンラインイベントに参加しているお店では、ゲームで遊ぶと50元分のクーポンをもらえるようになっていました。



独立書店『燦爛時光』を中心に活動している『Mingalar par 鳴個喇叭 緬甸街』というグループがあるのですが、当日はFacebookページで揚萬利さんによるミャンマー街のツアーが生配信されていました。


水かけ祭りは台湾でミャンマーの文化を広めるイベントとして、すでに定着しているように感じます。


點燈節(点火祭り)


ダディンジュッ(点火祭り / Thadingyut / 點燈節)は上座部仏教の伝統行事のひとつで、ミャンマー暦の7月、雨季が明ける満月の日に行われるお祭りです。

現在の暦では10月にあたり、台湾のミャンマー街でもダディンジュッ(點燈節)のお祭りが開催されます。

水かけ祭りは昼間に行われますが、点火祭りは夜に行われます。


水かけ祭りの賑やかさとは雰囲気が異なり、宗教的な静けさを感じます。(とはいえ人が多いので賑やかです)



パゴタのモニュメントが通りに飾られ、この日はライトアップされます。


華新街の途中にあるこのステージには仏像が並び、皆それぞれ参拝していました。



水かけ祭りの時と同様、ステージでは歌やダンスなどが披露されます。

点火祭りメインのイベントはイルミネーションの点灯です。




参考記事
▶︎雨季は明けたか?



托缽

毎朝10時頃に始まる托鉢は、ミャンマー街の日常風景です。華新街周辺にはミャンマー華人たちが通うお寺が3カ所あるそうで、托鉢をするお坊さんや尼さんのグループは二派に分かれているそうです。どちらのグループも華新街を往復し、市場の方へも足を伸ばしているところを見かけたことがあります。


ミャンマー街の托鉢について教えてくれたのは広東系ミャンマー華僑の勃固小吃店の老闆。こちらの食堂では毎日両グループへ料理を寄進しているそうです。



台湾でも仏教は信仰されていますが、ミャンマー街の住人たちが信仰しているのは東南アジアの上座部仏教(Theravada / 南傳佛教)のようです。

私はミャンマーへ行ったことはないのですが、ラオスで見た托鉢と同じ方式で行われていました。


日々の托鉢の他に、折々の機会に大規模な托鉢が行われることもあります。


2019年12月、えらいお坊さんの誕生日らしく、外国からのお坊さんを呼び、街をあげてお祝いする行事が行われました。


お坊さんはもちろん、ボランティアのスタッフも大勢いました。そして通りいっぱいに寄進をするための住人が溢れていました。

中和一帯にはおよそ4万人のミャンマー華僑が暮らしていると言われています。観光スポットとしての顔も持つミャンマー街ですが、それ以上にミャンマー華僑の地元住民たちが自分たちの文化を実践しながら暮らす”生きた街”なのだなと感じました。


お坊さんに渡すものは食べ物のほか、お金を包んだ紅包を渡している人の姿も見かけました。


この日は私は金龍小吃店で食事をしていたのですが、そちらのお店の方も箱いっぱいの果物を準備していました。




托鉢を終えた人たちに配るための果物やゼリー。





ミャンマー本国の仏壇は、日本や台湾では考えられないような華やかな電飾でピカピカしているそうです。そんなピカピカの仏壇が、台湾のミャンマー街にも根付いています。(こんなところまで同じにしているとは!)

ミャンマー街ではこのように電飾が輝く仏壇を持つお店がほとんどなので、おそらく仏教徒の割合が多いのだろうと想像します。


ヤンゴンのチャイナタウンや、ミャンマーの古くから華僑が住むエリアには関羽や媽祖を祀った中華系のお寺があるそうです。彼らはミャンマーでは媽祖廟などの華人固有の信仰を持っていたことが想像できるのに、台湾へ移住したミャンマー華僑たちは日々の信仰として上座部仏教を選択しているのもミャンマー街の興味深いところです。

今もミャンマーに暮らす華人の方は上座部仏教を信仰しているのでしょうか?それとも道教など、華人の宗教を信仰しているのでしょうか?そのあたりのミャンマー文化への同化も気になるトピックです。

華新街の宗教事情に関しては、仏教だけでなく雲南ムスリムや、まだまだ未知のキリスト教教会など、もっと掘り下げたいトピックがあるので、別の機会にまとめたいと思います。


▶︎ミャンマー街に暮らすミャンマー華僑の方々が通う三峽「迦葉禅寺」や南勢角後山のパゴダへ行った時の話



ミャンマー街関連の過去記事


コメント