台湾のミャンマー華人が通う仏教寺「迦葉禅寺」を見学しました


新北市の中和エリアには、1960年代からミャンマーに住んでいた華人たちが集まってできた地区があります。通称ミャンマー街と呼ばれる華新街にはミャンマー華僑が多く暮らしており、ミャンマーの食文化だけでなく、宗教や行事もミャンマーの生活が再現されています。

ミャンマー街の歴史や詳細はこちらの記事

敬虔な仏教徒であるミャンマー華人

ミャンマー街に暮らすミャンマー出身の華人たちは上座部仏教(Theravada Buddhism)を信仰しているそうで、ミャンマーと同じピカピカ光る仏壇を置いているお店が多いです。

ミャンマー街では毎朝の托鉢や、位の高いお坊さんの誕生日などの際には大規模な托鉢が行われています。


華新街の毎朝の托鉢風景

毎朝行われる托鉢は、華新街の近隣にある3つのミャンマー華人のお寺からそれぞれ托鉢のグループが通りと市場の周辺をまわっているようです。

食堂のオーナーなどが毎朝食事や現金などをお坊さんに寄進する様子を見ることができます。

2019年12月に行われた大規模な托鉢

こちらは2019年12月に行われた特別な托鉢。とても規模が大きく、お坊さんの数だけでなく、寄進するミャンマー華人たちの姿も普段の数倍に及んでいました。

このように敬虔な仏教徒が多いミャンマー華人ですが、ミャンマー街に通ううちに三峽に大きなミャンマーのお寺があることや、ミャンマーから位の高いお坊さんが台湾に来るのを楽しみにしていることなど、彼らの宗教に関するお話を伺うことができました。

ある日、「今度11月8日に大きな法會があってにぎやかだからぜひ行ってみるといい」…という情報をいただき、「迦葉禅寺」へ行く機会が訪れました。


2020年11月8日(日)、朝の7:30にMRT南勢角から専用のバスが出るということで、アウェーな状況に緊張しつつもなんとかバスに乗り込めました。

迦葉禅寺とは


迦葉禅寺に関してはあまり情報が得られていませんが、ミャンマー華僑の人たちの話や以下の資料によると、もともとは台湾人のお寺だった建物を2012年に買い取り、ミャンマー式の仏教寺に改装したのだそうです。

参考資料:
側記帕奧禪法在台灣: 兼述南傳佛教與華人學潮之相遇


迦葉禅寺の所在地は新北市の三峽地区。専用のバスで一時間弱の道のりでした。



バスを降りて帰りの集合時間を聞くと、午後1時半とのこと。今回は専用バスの乗客は法會のために来ているので、私も彼らの行動に習います。


お寺の門にはミャンマー語の看板が掲げられていました。


しかし元が台湾のお寺だったためか、建物や装飾などは台湾の要素もそのまま残っています。




この部分だけ見ると、台湾のお寺と変わりませんね。


石獅子も台湾で一般的な様式のものがそのまま鎮座していました。


中央にある本堂。後光がピカピカ光るミャンマー式の仏像がありました。この日はここで法會が行われます。


法會が始まる前に敷地内を散策します。台湾でミャンマーの上座部仏教を取り仕切っている「中緬南傳佛教協會」の看板が掲げられています。



このような白い獅子像は以前タイ北部のメーホンソン(ミャンマーとの国境近くの街)でも見たことがあります。この階段を登ると、もう一つの集会所と屋上に出られます。屋上にはパゴダがあるので、ここで靴を脱いでから上がって行きます。

二階にある小さめの集会所

屋上にはミャンマー式のパゴダが


屋上にはミャンマー式のパゴダ(仏塔)が並んでいます。金色に輝くパゴダはミャンマーのシュエダゴン・パゴダそのままの様式。

この日はあいにくの雨模様でしたが、天気の良い日は青空に映えるでしょうね。


パゴダの台座には寄進した人の名前が書かれていました。

この日は袈裟を寄進する日


この日、2020年11月8日の法會はお坊さんに袈裟を寄進する日のようです。話によると法會は毎月行われていますが、毎回内容は異なるそうです。


お坊さんが揃い始め、ミャンマー語で説法(?)や読経が始まると、信徒たちは真剣に耳を傾けていました。


私はミャンマー語も仏教に関しても知識があるわけではないので、雰囲気のみを味わいました。

時々太鼓や銅鑼が鳴らされ、とても荘厳な雰囲気が立ち込めていました。



この箱に入っているのがお坊さんが身につける袈裟です。ミャンマー街の雑貨屋でも売っているのを見たことがあります。

食事の準備をする信徒たち


この日、迦葉禅寺に着いてすぐに信徒たちのグループの一部はまず食事の準備に取り掛かっていました。



野菜を洗って切る人、食器を準備する人など、各々がテキパキと仕事をこなしていました。



本堂の左手にあるこの部屋は食堂にもなっているのでしょうか。円卓が並べられていました。


法會が終盤に差し掛かる頃には出来上がったおかずが並べられ始めました。仏教徒の食事のため、野菜だけの素食ですが、ミャンマー風の味付けになっているようです。


ミャンマー街の食堂では見ないタイプのおかずも多いです。これだけ種類があると圧巻です。


いよいよ食事の時間


ミャンマー語はわからない、上座部仏教についてもほとんど知らない一見さんである私にとって、この日の楽しみは食事です。

配膳は信徒の方が行ってくださるので、列に並んでお皿を受け取り、ご飯やおかずをよそっていただきました。


ゆで卵のカレーや豆腐と野菜の炒め物、生野菜のサラダにスープ。味付けはミャンマー街の諾貝爾小吃店でいただくような家庭の味で、とても美味しかったです。

写真には写っていませんが、この後揚げたてのアジョー(ミャンマー風野菜の天ぷら)を配る方が各席を回っていました。こちらも美味しかったです…!


食後のデザートは西米露。

運良くミャンマー街で知り合った方が声をかけてくださって、一緒にいただくことになりました。

食後の片付けも信徒が率先して行っていました。タダ飯をいただくわけにはいかないので、私も洗った食器を拭く作業を手伝わせていただきました。

ねこちゃんタイム


市場や宗教施設など、人の集まるところにねこちゃんあり…。迦葉禅寺にも4匹のねこちゃんの姿を見つけました。


この涼亭はねこちゃん専用のようです。しかしここのねこちゃんたちはソーシャルディスタンスのプロでして、近づいて指の匂いをかいでもらうことは叶いませんでした。


ご飯を食べる様子を見守らせていただきました。

迦葉禅寺へのアクセス


MRT南勢角駅からの往路は数台のマイクロバスに分かれてやってきましたが、帰りはまず行きに下車したお寺の門のところに集合し、乗用車で5分ほど山を下ったところに輸送されました。

山を降りて添福路へ


山を降りて添福路に停まっているマイクロバスに乗り換え、MRT南勢角駅まで送っていただきました。


迦葉禅寺までは公共交通機関の運行がないため、個人で訪れる場合はタクシーか自家用車・バイク・自転車などの手段を確保する必要があります。

定期的に法會が行われており、その際には専用バスが出るようなので、ミャンマー街で情報を仕入れて法會の団体に混ざって訪れるのがお手軽な交通手段だと思います。

迦葉禅寺
住所:237新北市三峽區添福路239之1號
電話:+886226733478



終わりに


華新街のミャンマー華僑の方たちがとても敬虔な仏教徒だということはかねてより感じていましたが、実際に法會の様子を見学させていただき、彼らの信仰の深さを実感することができました。

ミャンマー街の住民の間では常に次の法會の情報交換が行われていたり、信心深い住民たちからはよくミャンマーのお坊さんが台湾にいらっしゃるのを楽しみにしているという話を聞くことができます。

また、ミャンマー街の雑貨屋では寄進するための袈裟や、仏壇に置く祭具なども扱われており、食文化だけでなく宗教面でもミャンマーの生活を維持できるようになっています。

話によると、台湾中央の南投県にもミャンマーの有名なお坊さんがいらっしゃるそうです。ミャンマー華人たちの宗教事情をこれからも学んでいきたいと思います。

▶︎南勢角後山のパゴダへ行ってきた時の話

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