台湾の考古学を知る第一歩:考古学博物館と遺跡公園へ行こう


皆さんは台湾の考古学について、何か聞いたことがありますか?おそらく多くの日本人にとって台湾の考古学はあまりなじみがないと思います。今回の記事では、台湾で考古学を学ぶ筆者が台湾の考古学博物館の見どころを主観で紹介します。

2022年現在、台湾には考古学専門の博物館が4館があります。その他、発掘調査が行われ、遺跡公園として整備されたスポットや、考古学の内容も扱う博物館もリストアップしました。



台湾の考古学博物館&遺跡公園マップ



目次

十三行博物館

淡水の対岸、新北市の八里にある十三行博物館は、台北から日帰りで行ける考古学専門の博物館です。

十三行博物館の成り立ち:汚水処理場建設と遺跡の保護運動

このエリアで1957年に製鉄技術を持つ人類の遺跡が見つかり、「十三行遺跡」と命名されました。その後、80年代後半から90年代にかけて遺跡の範囲内に汚水処理場を建設する計画が持ち上がり、十三行遺跡は破壊の危機に陥りました。その際に多くの学者や市民が保存運動を立ち上げ、遺跡の緊急発掘(中国語:搶救發掘)が行われました。

発掘された遺物は、1995年当初は汚水処理場の敷地内に建設された「十三行遺址文物陳列館」に展示されており、1998年に「十三行博物館」と改名。2003年に「十三行博物館」として正式オープンし、川辺の公園などを含めたレジャースポットとして休日はにぎわいを見せています。

発掘現場の再現

十三行博物館には常設展、時期ごとに内容の変わる特別展、屋外の新北考古公園があります。

常設展は十三行遺跡について紹介するムービーを流す「看見遺址」、十三行遺跡の出土遺物を展示し、当時の人々の生活を紹介する「十三行生活」、科学的な考古学一般についての知識を紹介する「考古工作站」、VRやARの技術を用いて八里の過去の歴史事件を紹介する「八里時光機」のコーナーに分かれています。

先史時代の土器づくりを再現した模型

十三行博物館の見どころ:先史時代の製鉄、外部との交易、ケタガラン族との関係

十三行博物館で展示されているのは、現地の十三行遺跡から出土した遺物が中心です。十三行遺跡は1800~500年前頃の鉄器時代に属し、台湾で初めて製鉄の痕跡が残る先史時代の遺跡として注目されています。

先史時代の製鉄の様子

当時の製鉄の様子を表す模型や出土した鉄くずの他、かつて十三行の人々が使用していた道具や、食べた貝殻を捨てて形成された貝塚、漢人の銅銭や交易で得たと考えられる外来のガラスビーズなど、様々な遺物を通して十三行の人々の暮らしが復元されています。

「十三行生活」展示室

遺跡から得られた痕跡をもとに、十三行の人々の住んだ家、食べ物、埋葬の風習など様々なことが復元されてきました。台湾の考古学を学ぶにあたり気になるのが、現在の原住民族と先史時代の人々の関連性ですが、十三行文化は北部一帯に拡散したケタガラン族との関連が強いと言われています。

土器などを副葬品に、頭を西南方向に向ける埋葬の様子

十三行博物館

  • 住所:新北市八里區博物館路200號(map)
  • 開館時間:9:30~17:00/休日は18:00まで延長、毎月最初の月曜定休
  • アクセス:
    • ①MRT「淡水駅」の一番出口を出て渡し舟で対岸の八里へ、その後バス紅13に乗車し、「十三行博物館」で下車。
    • ②MRT「関渡駅」一番出口を出て、バス紅13に乗車し、「十三行博物館」で下車。
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国立史前文化博物館(台東)

国立史前文化博物館

国立史前文化博物館は2002年にオープンした、台湾で最初の考古学専門の博物館です。規模も最大級なので、台湾の考古学について学びたい方はぜひ訪れるべき施設です。

ただ場所が台東の駅から少し離れた康楽駅そばにあり、台東の公共交通機関の便数の少なさを考えるとアクセスはやや悪いです。私は台東市内でレンタサイクルを借りていきました。

国立史前文化博物館の成り立ち:鉄道駅の建設中、偶然見つかった卑南遺跡

出土した玉(ネフライト)飾りモチーフ

事の発端は1980年7月、台湾鉄道の台東新駅の建設工事が行われた際に偶然先史時代の遺跡が発見され、後に卑南遺跡と名づけられました。

思いがけず発見された大規模な遺跡のニュースは当時のメディアに大きく報じられ、市民の注目を集めました。台東県政府は当局に通報した後、工事を停止。台湾大学人類学系の宋文薫教授に委託し、十年あまりの時間をかけて緊急発掘が行われてきました。

卑南遺跡の発掘調査で出土した遺物を中心に、1990年から博物館設立の計画が始まり、2002年に史前文化博物館が正式にオープン。

2020年5月31日から、開設以来初めての大規模な常設展のリニューアル工事が始まっており、2022年10月現在、常設展は休止中です。2022年の6月から一部再開し、特別展は復活しています。

下の画像はリニューアル前に訪れた際に撮影したものです。常設展再開後にぜひまた訪れたいと思います。

国立史前文化博物館の見どころ:大量の玉製品と、新石器時代台湾東部の栄華

模型やジオラマも多い

史前文化博物館では地元卑南遺跡から出土した遺物のほか、考古資料としては台湾各地域、中国や太平洋地区の遺物、その他人類学資料や、地質学などの自然史資料も大量に所蔵しています。そのため、リニューアル前の常設展では地元台湾東部の物だけでなく、台湾全体の考古学的な発見も網羅されたボリュームのある内容でした。

中でもやはり注目すべきは台湾東部で採れる玉(ネフライト)製品です。国宝や重要古物に登録された玉の装飾品もある卑南文化の遺物はぜひ見ていただきたい展示品です!

オーストロネシア語族の拡散ルート

台湾考古学の分野で研究されているテーマを知ることができるのも博物館ならではの体験です。台湾原住民族が属するオーストロネシア語族の拡散が台湾から始まったとする「Out of Taiwan」仮説はぜひチェックしたい項目です。


國立史前文化博物館

  • 住所:臺東縣臺東市豐田里博物館路1號(map)
  • 開館時間:9:00〜16:00。月曜定休(ほかにも休館となる日があるので、ホームページで確認してください)
  • アクセス:
    • ①台湾鉄道「康樂駅」から徒歩6分。
    • ②台東駅前や市内のレンタルバイク、レンタサイクル等を借りて行く
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南科考古館(台南)

南科考古館

2019年10月に台南にオープンした国立史前文化博物館の分館である南科考古館。ここも台南市内から離れており若干アクセスが悪いのですが、新しく展示方法も見ごたえのある考古学専門博物館です。

南科考古館の成り立ち:サイエンスパーク設立の際に広範囲で行われた発掘調査

南科地域で発見された文化の多様さ

1995年に台南でサイエンスパーク(南部科学園区=南科)建設の工事が行われる際に、考古学的な発掘調査も行われてきました。調査範囲は広域に渡り、82か所以上の遺跡が発見されました。

発見された遺跡の年代は古いもので5000年前の新石器時代から、新しいもので300年前の漢人移民が増えた時代と多様で、様々な文化を持つ人々がこの地で暮らしてきたことを物語っています。

南科でも当初は規模の小さな陳列室が建てられていたのですが、2019年に国立史前文化博物館の分館「南科考古館」としてオープンしました。

南科考古館の見どころ:様々な時代に跨る人々の暮らし。近世漢人の遺物も

南科考古館の第一展示室

南科考古館の常設展は三つの展示室に分かれています。第一展示室はサイエンスパーク建設の際に行われた発掘調査で見つかった、新石器時代から近世漢人の遺跡の出土品が展示されています。

各時期の考古学文化を再現したジオラマが層状に展示されている

清代の漢人が持ち込んだ広東・福建産の染付磁器

清代の染付磁器の皿や杯など

漢人移民の残した清代の染付磁器(青花瓷)がたくさん展示されているのが個人的に推したいところです。原住民族が暮らしていた台湾の南部に大量の漢人が移住してきたことが、出土品からもわかります。

南科考古館の第二展示室

第二展示室はジオラマなどを多用し、過去の台南に暮らした人々の信仰、飲食、狩猟や漁業などの生業を復元しています。

南關里遺址で出土した犬のお墓を再現したもの

第三展示室は発掘から過去の生活を復元する過程を紹介。考古学の科学的な面を知ることができるようになっています。

南科考古館の第三展示室に展示される植物遺存体

南科考古館の最後の方には、博物館の研究員が使うラボを覗くことができるエリアがありました。ここでは毎日定時にインターホンを通じて研究員の方と話ができるようになっているようです。

毎日特定の時間には博物院の研究員と直接話ができる

南科考古館

  • 住所:台南市新市區南科三路10號(map)
  • 開館時間:9:00〜17:00。月曜定休
  • アクセス:
    • 台湾鉄道で台南の「新市」駅で下車し、バス緑1線に乗り「南科商場」で下車後、徒歩3分。
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花蓮県考古博物館(花蓮)

花蓮県考古学博物館

2021年2月に花蓮にオープンした花蓮県考古学博物館。台湾鉄道の花蓮駅から更に南下した「豊田駅」から徒歩で行くことができます。

花蓮県考古学博物館の成り立ち:公共施設を地域の考古学博物館に

花蓮県考古学博物館の常設展

花蓮県考古学博物館は2021年にオープンしたばかりの新しい考古学博物館です。1984年に建てられた寿豊郷の公共施設をリノベーションして、花蓮県一帯でこれまで発掘が行われた遺跡の出土品を収蔵・展示する考古学博物館となりました。

先史時代の土器

花蓮県考古学博物館の見どころ:地元「豊田」で採れる玉の装飾品や半製品

豊山郷の入り口には「台湾玉の故郷」の石碑が立つ

花蓮県考古学博物館への道中、寿豊郷の豊田の入り口に「台湾玉の故郷」と書かれた石碑が立っていました。

現在でも豊田は玉(ネフライト)の産地として有名ですが、豊田の玉は先史時代から台湾島の東部だけでなく桃園など北西部にも流通していました。それだけでなく、新石器時代にはなんと東南アジアのフィリピンやベトナム、タイなどでも台湾産の玉でできた装飾品が出土しており、当時の交易範囲の広さと、台湾玉の需要の高さを物語っています。

加工中の玉(ネフライト)と切り取られた玉の破片

花蓮県考古学博物館でぜひ注目したいのが、玉の半製品。制作途中の玉の切れ端などが出土するということは、ここにかつての工房があったことを意味します。

玉(ネフライト)製品各種

以前タイ中部のウトン国立博物館で、Ling Ling-Oと呼ばれる新石器時代の玉製の飾りを見学しました。
▶︎ドゥヴァーラヴァティー期の展示を見に、ウトン国立博物館へ | U-Thong National Museum

そのウトンの展示には「台湾産の玉」とは書かれていませんでしたが、研究によると豊田で採れた玉は台湾島の西部や、新石器時代には海を渡りベトナム、フィリピン、タイまで運ばれていったそうです。

新石器時代の台湾玉の貿易ルート

花蓮県考古学博物館には当時の玉の交易ルートを示した地図がありました。新石器時代の玉の交易ルートとオーストロネシア語族の拡散ルートの重なりも推察されます。

台湾東部の新石器時代に花開いた巨石文化

また、個人的な花蓮県考古学博物館の良かったところは、筆者が台湾大学人類学系の学部時代に参加した富源遺跡の発掘実習で自分たちのグループの試掘坑から出土した石器に再会できたこと。

発掘実習で筆者の属するグループが発掘した富源遺跡の石器

自分たちの手に触れた数千年前の石器が、こうして博物館に展示されていると思うと静かな感動がありますね。

筆者が学部時代に発掘実習で参加した調査の報告書


花蓮港小学校の文字が入った湯のみ

そのほか、花蓮県博物館には考古学博物館ではまだ珍しい近現代の遺物も展示されています。

▶︎日本統治時代の台湾を掘る:花蓮県考古博物館の近現代考古学展示

日本統治時代には多くの日本人が花蓮に移住し、日本の物を持ち込みました。この博物館には美濃や瀬戸、九谷などの焼き物も展示されています。


花蓮縣考古博物館

  • 住所:花蓮縣壽豐鄉市場1號(map)
  • 開館時間:9:30〜17:00。月火曜定休
  • アクセス:
    • ①台湾鉄道「豊田駅」で下車し、徒歩10分。
    • ②花蓮バスターミナル(轉運站)からバス1121または1122に乗車し「豊田」で下車し、徒歩8分。
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台湾ではこれまで数多くの発掘調査がなされてきましたが、多くは調査後に埋め戻され保存されており、遺跡公園として発掘された遺構などが公開されている例はあまり多くありません。

ここでは、台湾各地にある新石器時代から近世漢人移民とも関係のある遺跡まで、数カ所の遺跡公園を紹介します。

卑南遺址(台東)

卑南遺跡公園

台湾鉄道の台東駅の裏にある卑南遺跡公園には、先史時代の台湾における最大級の集落と言われる卑南遺跡の発掘で出土した家屋の遺構が屋外展示されています。

古くは日本統治時代に学者たちはこの地に巨石文化があったことを記録しており、戦後にも調査が行われてきました。

1980年に台湾鉄道の駅建設工事の際に再び先史時代の石棺などが大量に出土したため緊急発掘が行われ、世間の注目を集めました。その際に出土した遺物の多くは国立史前文化博物館に収蔵されています。

遺跡現地には発掘された遺構の一部や石柱が残され、公園内には展示室も建てられています。

遺跡公園の案内

卑南遺跡は約3500年前〜2300年前に栄えた新石器時代晩期の卑南文化を代表する遺跡で、地元で採れる玉を用いた装飾品や、石棺を用いた埋葬文化が特徴です。

卑南遺跡の石でできた家屋の基礎部分

卑南遺跡の石でできた家屋の基礎部分(解説)

卑南遺跡公園の展示室

卑南遺跡公園の展示室・埋葬の様子

遺跡公園の展示室にも、史前文化博物館と同様に卑南遺跡の出土品が展示されています。石器、土器、玉器や、当時の埋葬文化を語る石棺を見学できます。

環状の玉の装飾品など

規模は小さめの展示室ですが、常設展の他にも時期によって内容の変わる特別展が行われることもあります。

月形石柱

台湾鉄道台東駅の裏にあるので、市内観光へ向かう前に立ち寄ることのできるスポットです。

卑南遺址

  • 住所:台東縣台東市文化公園路200號(map)
  • 開館時間:9:00〜17:00。月曜定休
  • アクセス:
    • 台湾鉄道「台東駅」から徒歩7分。
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西班牙諸聖教堂考古遺址(基隆和平島)

17世紀スペイン人が残した修道院跡

西班牙諸聖教堂考古遺址は、1626年に台湾北部に上陸したスペイン人が基隆和平島に残した修道院の遺跡です。

2022年10月現在、工事につき公開を停止中だそうです

この遺跡については過去にこちらの記事で紹介しています。
▶︎17世紀の台湾歴史考古学:基隆和平島のスペイン修道院の発掘

スペインの後に台湾に来た日本人の痕跡も残る

スペイン人が来る前は、和平島は原住民族のケタガラン族の支族であるバサイ系の人々が暮らす地でした。

17世紀に台湾北部に上陸したスペイン人は、和平島にサン・サルバドル城(要塞)を築き、周辺に修道院も残しました。

修道院建築の基礎部分が残っている

台湾の考古学者は当初、サン・サルバドル城の調査をしたかったのですが、現在その場所には造船所が建っているため調査ができず、代わりにこの修道院の発掘が行われました。

聖職者に関係する遺物や、染付磁器などが出土した

2022年夏に再訪した際には、天井部分が新しくなっていました。今後この場所に地元の歴史を紹介する博物館ができるかもしれないとか。




西班牙諸聖教堂考古遺址

  • 住所:基隆市中正區平一路25號(map)
  • 開館時間:2022年10月現在、工事につき公開を停止中だそうです
  • アクセス:
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麻荳水堀頭遺址(台南)

乾隆時代の麻豆港の跡地

水掘頭遺址は清朝乾隆年間(1736〜1795)に使われていた麻荳港の跡地です。もともと原住民族のシラヤ族が暮らしていた台南一帯に漢人の移民が増え、物資の輸入のためにこの港が作られました。

牡蠣の殻や米汁に砂を加えて作られた三和土の船着場の跡が残る他、石器や土器、陶磁器も出土しており、早期漢人移民の開拓史の研究にとって重要な遺跡と言えます。

倒風內海故事館

2002年〜03年と2008年に発掘調査が行われ、出土遺物は遺跡と同じ麻荳古港文化公園の敷地内にある倒風內海故事館に展示されています。

かつての麻豆は内海の港だった

清代福建広東産の染付磁器も出土している

清代の福建広東などで作られた染付磁器も多数展示されていました。


麻荳水堀頭遺址(倒風內海故事館)

  • 住所:台南市麻豆區南勢87之30號(map)
  • 開館時間:9:00〜16:30。月火定休
  • アクセス:
    • 台湾鉄道「隆田駅」で下車し、バス橘10「台湾首府大学」で下車し、徒歩6分。
    • 高鉄(新幹線)「嘉義駅」で下車し、バス橘9-1「麻豆轉運站(バスターミナル)」で下車、バス橘10または黄20で「台湾首府大学」で下車し、徒歩6分。
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惠來遺址(台中)

惠來遺址

惠來遺址は台中市内にある遺跡公園です。新石器時代中期の牛罵頭文化(4500~3400年前)と營埔文化(3000~2000年前)、新石器時代晩期の番子園文化(2000~400年前)の文化層が出土している、台湾中部の重要な遺跡です。

出土品の解説

開発がものすごいスピードで進む都市の中に発見された遺跡であったため、緊急発掘もじっくり進められたわけではなかったようです。台中にある国立自然科学博物館の人類学チームが調査にあたり、2010年に台中市政府により市定遺跡に登録されました。

現在は遺跡公園として遺構が残されることで、地元の人たちに先史時代の台中の歴史文化を教育する場として活躍しているそうです。


出土した遺物は、近隣にある国立自然科学博物館に収蔵・展示されています。

惠來遺址

  • 住所:臺中市西屯區河南路三段、市政北一路口,惠民段144地號(map)
  • 開館時間:
  • アクセス:
    • 台湾鉄道「台中駅」からバス75「第六分局(惠來路)」で下車し、徒歩6分。
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台湾にある考古学専門の博物館は現在4館ですが、総合博物館の中にも考古学に関する展示を持つ館があります。その他、小規模な考古学陳列室も紹介します。

国立自然科学博物館(台中)

国立自然科学博物館

台中にある国立自然科学博物館は、生物や宇宙といった自然科学的な内容の他に、人類学・考古学の研究チームも擁し、展示も充実しています。人類学の展示は大阪のみんぱくに近いダイナミックな展示で、非常に見応えがあります。

考古学の内容を扱う二階の「古代人説故事」展示室では、自然科学博物館の考古学チームが発掘調査した各遺跡の出土品が収蔵・展示されています。

2F人類文化廳の「古代人說故事」常設展

玉(ネフライト)製の装飾品

自然科学博物館の研究チームが発掘した遺跡の遺物が展示されている

自然科学博物館の考古学チームが調査した台中市惠來遺址の牛罵頭文化、營埔文化、番子園文化などの遺物や、嘉義の新港にある早期漢人の集落だった板頭村遺址の出土品などを見学できます。

嘉義県新港の板頭村遺跡で出土した清代の染付時期

板頭村遺址で出土した陶磁器は、嘉義の現地にも展示があります。(笨港戶外考古園區
▶︎【台湾考古学】台南の骨董屋で見つけた清代道光年間、德化窯の霊芝紋青花皿



國立自然科學博物館

  • 住所:台中市北區館前路1號(map)
  • 開館時間:9:00〜17:00。月曜定休
  • アクセス:
    • バス300, 301, 302, 303, 304, 305, 306, 307, 308, 309, 310, 324, 48等で「科博館」下車。
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蘭陽博物館(宜蘭)

蘭陽博物館

蘭陽博物館は宜蘭県の頭城にある郷土歴史文化博物館です。宜蘭の自然や伝統文化などを展示する常設展の他、子供向けの考古学ルーム「兒童探索館」があります。(大人も入ることができます)

蘭陽博物館の兒童探索館で解説を聞く子供達

兒童探索館(児童探索館)は毎日午前3回と午後3回、45分間のガイドツアーが行われ、参加者は発掘・遺物実測を体験したり、ガイドの解説を聞き、地元宜蘭の各遺跡について理解を深めることができます。

兒童探索館の入り口で整理券を入手し、チケットを購入

蘭陽博物館は常設展・特別展・児童探索館はそれぞれ別のチケットが販売されています。

児童探索館のチケットは、午前の部は9:00、午後の部は12:30に配布が開始される整理券を入手したら、その整理券を持ってチケット売り場へ行き、児童探索館のチケットを購入するという流れで入手できます。

蘭陽博物館の兒童探索館

この木造の家は、地元クヴァラン族の聞き取りを通して復元した伝統的な家屋だそうです。家の中もしっかり再現されています。

蘭陽博物館の兒童探索館

2022年10月から、展示品に地元宜蘭の国定考古遺跡「漢本Blihun遺跡」の遺物も加わりました。

漢本遺跡で出土した貝製品

漢本遺跡で出土した貝製品

児童探索館では宜蘭で調査が行われた淇武蘭、漢本Blihun、丸山、大竹圍、新城遺跡の遺物やそのレプリカが展示されています。新石器時代から、漢人移民が増加した時代まで、宜蘭で暮らして来た人々の文化を垣間見ることができます。

淇武蘭遺跡の瑪瑙、染付時期、金箔、貨幣。多くが外来のもの

漢本遺跡などの土器や石器


蘭陽博物館で以前行われた水中考古学の特別展


蘭陽博物館では定期的に内容の変わる特別展も行われています。こちらでも時々考古学に関係のあるテーマの展示が行われます。画像は以前開催された水中考古学に関する特別展のもの。


蘭陽博物館

  • 住所:宜蘭縣頭城鎮青雲路三段750號(map)
  • 開館時間:9:00〜17:00。水曜定休
  • アクセス:
    • ①台湾鉄道「頭城駅」で下車し、徒歩20分。または頭城駅からバス1311766紅1(週末のみ)で「蘭陽博物館」または「烏石港」下車。
    • ②MRT「圓山駅」から国光客運バス1877に乗車し、「蘭陽博物館」で下車。

大園尖山考古展示館(桃園)

大園尖山考古展示館

2021年10月に横山書法芸術館の地下にオープンした大園尖山考古展示館。

規模は小さいながら、地元桃園の大園小学校などで出土した遺物を10万点も所蔵しているそう。展示されているのはそのうちの一部ですが、ガイドの方の解説も親切で、この地域の先史時代の地形の変化や、物資の交換ルートなど、興味深い知識を得ることができました。

大園尖山考古展示館

大園尖山遺跡で出土した土器

約5000〜2000年前の土器や石器、玉器などが展示されています。桃園は台湾の北西部に位置しますが、大園遺跡では北投の砂岩や、東部で採れる玉なども出土しており、新石器時代の人々の交易範囲の広さを物語っています。

大園尖山遺跡で出土した石器

地形の変化と川の流れを遊びながら学べる装置

大園尖山考古展示館

現在は横山書法芸術館の地下に間借りしている考古展示館ですが、将来桃園の航空城が完成した際には「大園考古遺址博物館」を建設する計画があるそうです。


大園尖山考古展示館

  • 住所:桃園市大園區大仁路100號B1(map)
  • 開館時間:9:00〜17:00。火曜定休
  • アクセス:
    • ①高鉄(新幹線)「桃園駅」から徒歩10分。
    • ②桃園空港MRT「A17領航駅」から徒歩7分。
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中研院史語所 歷史文物陳列館(台北)

中央研究院の考古学展示「島嶼群相」

台北の南港にある研究センター中央研究院の歴史語言研究所付属の博物館「歴史文物陳列館」の二階で、中央研究院の考古学チームが調査を行なった台湾各地の遺跡の出土品を展示する「島嶼群相──臺灣考古展覽」展が行われています。

中央研究院の考古学展示「島嶼群相」

2006年に中央研究院のチームが澎湖群島や東沙群島、綠島で行なった沈没船の調査で得られた遺物も展示されています。

中央研究院が行なった水中考古学の事例と出水遺物


中研院史語所 歷史文物陳列館

  • 住所:台北市南港區研究院路二段130號(map)
  • 開館時間:毎週水曜、土曜、日曜の9:30〜16:30
  • アクセス:
    • MRT青線・茶色線「南港展覧館駅」の5番出口を出てバス205、306、620、645副、小1、小12に乗車し、「中央研究院 Academia Sinica」で下車し、徒歩8分。
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終わりに

日本人にとってはあまり馴染みのない台湾の考古学ですが、博物館へ行けば、楽しみながら地元の考古学についての知識を得ることができます。ぜひ台湾の考古学博物館や遺跡公園に足を運んでみて下さい!


関連記事
▶︎日本統治時代の台湾を掘る:花蓮県考古博物館の近現代考古学展示

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