ウトン国立博物館はタイのスパンブリ(Suphanburi)県にある1966年に開館した国立博物館です。
先史時代よりウトン(U-Thong)は交易で栄え、6世紀ごろに興ったと言われるドゥヴァラヴァティー王国 (Dvaravati)の時代には特に重要な都市に成長しました。この博物館では地元の考古学調査で出土した遺物を多数展示しています。
タイの研究者 Atithep Chaetnalao によると、歴史的な遺物を楽しく見学できる体験型の展示手法が特徴とのこと。
Atithep Chaetnalao氏による展示方法を解説した論文はResearch Gate でダウンロードすることができます。
- → Design and Development of Interactive Media Installations, Experimental Prototype for U-Thong National Museum, Thailand*
- → Museum Interactive Perception: Design Study of The Replay: U-Thong Sri Dvaravati Exhibition at U-Thong National Museum
私が見学した時の動画はこちら
環濠で囲まれたウトン国立博物館
ドヴァーラヴァティー期の環濠 |
ウトンや他のドゥヴァーラヴァティー期の都市は水の入った環濠で囲まれているのが特徴です。この水は農業に使われたり、防衛の役割をはたしていたと考えられています。
古代のウトンは北東に傾いた楕円形の都市で、現在でも水の入った環濠を見ることができます。
Google Mapの航空写真で見ると、黄色の線で囲んだ部分に環濠があるのがわかるでしょうか。
88番のロットゥー(乗り合いのミニバン)から降りて徒歩5分程で、博物館の入り口に到着しました。詳しいアクセス方法は、記事の最後にまとめておきます。
ウトン国立博物館入り口 |
敷地内には伝統的な高床式住居の復元もあり、広々としていました。
チケットは150バーツ(外国人料金)です。
チケット売り場で博物館のパンフレットをいただきました。フルカラーで、館内の地図や各展示室のテーマ、重要な収蔵品が記載されています。タイ語と英語が両方表記されています。
ウトン国立博物館の展示
博物館は全部で6つのパートにわかれており、展示内容はこんな感じです
- Ancestors of U Thong People | ウトンの人々の祖先
私が見学した2017年8月には特別展は行われていませんでした。
01 Ancestors of U Thong People | ウトンの人々の祖先
この展示室では、ウトンの土地で暮らしてきた人々の歴史的な遺物が展示されています。ドゥヴァーラヴァティーを担ったのは、現在はミャンマーに住むモン族の祖先だと考えられていますが、交易を通して様々な人がこの土地に住んでいたことを感じられる展示になっていました。
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ヒンドゥーの寺院で見られるリンガ |
ドゥヴァーラヴァティー期の主要な宗教は仏教であると考えられていますが、ヒンドゥー教のシンボルも遺跡から出土し、ヒンドゥー教も信仰されていたことがわかります。
印章 |
8~9世紀の銘文。3〜9世紀に南インドで栄えたPallava朝のものらしい |
水晶や瑪瑙で作られたアクセサリー類 |
ドゥヴァーラヴァティーの仏像は鼻がひろく、唇は厚い。全体的に丸みのあるのが特徴 |
写真は撮っていませんが、西洋やインドなどとの交易によるつながりを裏付ける西洋のコインの展示もありました。
バンコク国立博物館の仏教芸術展示室にあった海の交易ルートを表す地図 |
海のシルクロードと呼ばれる海の交易ルートで、東南アジアは中国やインドを通して西洋世界ともつながっており、人や物品の来往がありました。
ウトンというこの土地もその交易ルートの一部で、古くから仏教都市として栄えていたようです。
この展示室ではドゥヴァーラヴァティー王国が栄えていた6〜11世紀のウトンの様子をうかがい知ることができます。
タイは6世紀ごろには海水面が今より高く、現在のバンコクは水面下にありました。下の地図がわかりやすいのですが、水色の部分はドゥヴァーラヴァティーの時代の海水面で、濃い青の部分は現在の海水面です。
ウトンというこの土地もその交易ルートの一部で、古くから仏教都市として栄えていたようです。
02 Dvaravati at U Thong | ドゥヴァラヴァティー期のウトン
この展示室ではドゥヴァーラヴァティー王国が栄えていた6〜11世紀のウトンの様子をうかがい知ることができます。
ドゥヴァーラヴァティーの首都であり、最大規模の都市面積と仏教建築を持つのはナコーン・パトム (Nakhon Pathom)ですが、ウトンも交易の拠点として栄えていました。
環濠の内部や周辺にいくつか遺跡の残骸が残っており、数多くの遺物が出土しています。
ナコーン・パトム博物館にあった地図 |
海水面が高かった関係で、当時のウトンは海に近く外部との交流も盛んでした。地図の左上がウトン(U-Thong)、チャクラ(法輪)があるのがナコーン・パトム(Nakhon Pathom)、五体の浮き彫りがあるのがクブア(Khu Bua)です。
後ろでへらへら笑っているように見えるのはおそらく寺院のガーディアンのライオン。画像中央の険しい顔をしている子が個人的にはお気に入りです。
金属製のアクセサリーを作る際に使っていた鋳型。アクセサリーそのものだけでなく、こういうものが出土するということは、ウトンにはアクセサリーを作る職人がいたということを物語っています。
上のような鋳型を使って製作された指輪や耳飾りなどのアクセサリー。画像右には玉製のものも見えます。
立体的で大ぶりのアクセサリーです。
当時の仏教建築の飾りになっていた像は、厳かな感じではなくどことなくゆるい感じがして私は好きです。
これら帽子をかぶった人物は、文献でよく「外国人」と呼ばれているもの。ウトンは海を通じてインドをはじめ、西洋世界とも繋がっていたので、モン族以外もいろいろな民族がウトンに住んでいました。この像の彼らがどこの人であったかはいろんな説があるようです。
参考文献:
The Traders of Khu Bua
同じような外国人の像はバンコクの国立博物館でも見学できます。
展示室では仏教の重要なシンボルであるダルマチャクラ(法輪)や仏像、寺院の装飾品など、宗教関連の物が多く展示されていました。
後ろでへらへら笑っているように見えるのはおそらく寺院のガーディアンのライオン。画像中央の険しい顔をしている子が個人的にはお気に入りです。
金属製のアクセサリーを作る際に使っていた鋳型。アクセサリーそのものだけでなく、こういうものが出土するということは、ウトンにはアクセサリーを作る職人がいたということを物語っています。
上のような鋳型を使って製作された指輪や耳飾りなどのアクセサリー。画像右には玉製のものも見えます。
立体的で大ぶりのアクセサリーです。
土器製のランプ |
当時の仏教建築の飾りになっていた像は、厳かな感じではなくどことなくゆるい感じがして私は好きです。
これら帽子をかぶった人物は、文献でよく「外国人」と呼ばれているもの。ウトンは海を通じてインドをはじめ、西洋世界とも繋がっていたので、モン族以外もいろいろな民族がウトンに住んでいました。この像の彼らがどこの人であったかはいろんな説があるようです。
参考文献:
The Traders of Khu Bua
同じような外国人の像はバンコクの国立博物館でも見学できます。
03 Historical Development of Suvarnabhumi | スワンナプームの歴史の発展
Suvarnabhumi (Wikipedia) と聞いて最初に思い浮かぶのはタイのスワンナプーム国際空港ではないでしょうか。
Wikipediaによると、スワンナプームとは『黄金の土地』を表すサンスクリット語で、仏教の文献でその存在が歴史の舞台に現れます。ですがそれがどこにあったのかは学者間で意見が別れているようです。多くは東南アジアか南インドだと考えられているそうです。
このウトンの博物館では、ドゥヴァーラヴァティーこそがスワンナプームであるという立ち位置に立って展示を行なっているようです。
この展示室では新石器時代までの先史時代のウトンの様子を表す展示がおこなわれていました。
金属器を製作する人 |
ここではジオラマや人物模型を使って、視覚的に当時の様子を知ることができます。
Ling Ling-O |
この展示室で私が一番感動したのはこれ、『Ling Ling-O』がこの目で見られたことです。
Ling Ling-Oとはフィリピンやベトナムの新石器〜金属器時代の遺跡でも出土している軟玉(ネフライト)製のアクセサリーで、その軟玉の原料は台湾東部の花蓮だと考えられています。
台湾が新石器時代から東南アジアの各地と繋がっていたことがわかります。
その他この展示室には石器時代の洞窟に残されていた壁画のレプリカが展示されていました。
04 Maritime Trade at Suvarnabhumi | スワンナプームの海洋交易
この展示室ではジオラマを用いた展示手法で、交易船をモチーフとした展示エリアに品物を積んだ商人の姿が見られます。
西洋のランプや、交易品である数々の商品のレプリカが並んでおり、海のシルクロードを通した西洋世界とのつながりを感じさせます。この展示室もジオラマやレプリカを用いた展示手法が特徴でした。
ナコーン・パトムの博物館でも多数展示されていた法輪(チャクラ)がここでも印象的に展示されています。
特にこの鏡を用いた展示手法は、ちょうど鏡の中に当時の風景を再現したジオラマが映り込み、鏡の中の世界では仏教の中心として栄えたウトンが存在しているかのようです。
ナコーン・パトムの博物館でも多数展示されていた法輪(チャクラ)がここでも印象的に展示されています。
特にこの鏡を用いた展示手法は、ちょうど鏡の中に当時の風景を再現したジオラマが映り込み、鏡の中の世界では仏教の中心として栄えたウトンが存在しているかのようです。
この展示室にはボタンを押すと動画が流れる装置などもあったのですが、残念なことに故障中のものが多かったです。
外へ出るとピンクの壁をバックに、レトロな自転車や棚が置かれていました。
9:00-16:00
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外へ出るとピンクの壁をバックに、レトロな自転車や棚が置かれていました。
隣接した広場には伝統的な茅葺の家屋の復元が展示されています。
最後にチケット売り場へ戻り、冊子とキーホルダーを自分へのおみやげに購入しました。
冊子はタイ・英両表記で、当博物館の展示品がフルカラーで紹介されています。
ウトン国立博物館について
開館時間
水曜日〜日曜日(月曜火曜は休館)9:00-16:00
チケット料金
150バーツ
ウェブサイト
https://www.tourismthailand.org/Attraction/U-Thong-National-Museum--5087ウトン国立博物館へのアクセス方法
鉄道や公共バスでのアクセスができないので、タイ語ができない外国人旅行者には不便でした。私はカムペーン・セーン(Kamphaeng Saen)で泊まったホテルのスタッフに教えてもらい、ロットゥーという公共のミニバンで行きました。
ホテルのスタッフによると、ウトンを経由するのは次の2路線のロットゥー;
88番のロットゥーはバンコク〜スパンブリ(Bangkok-Suphanburi)間、
994番のロットゥーはバンコク〜バンライ(Bangkok-Banrai)間を運行しているそうです。
私は前日がカムペーン・セーン(Kamphaeng Saen)泊だったので、国道321号線上にある市場の乗り場から88番のロットゥーに乗りました。だいたい15分〜30分に一本くらいは運行しているようです。料金は確か70バーツほどでした。
ロットゥー乗り場は屋根のある東屋のような建物になっているので、見かけたらすぐに乗り場だとわかると思います。
ロットゥーはフロントに大きくナンバーが書いてあるので、車が見えたら手を上げて乗車の合図をすると停まってくれます。
88番のロットゥーでカムペーン・セーンからウトンまでは45分ほどでした。乗車の際に運転手に「ウトン」と伝えておくと、降りるタイミングを教えてくれました。帰りはカムペーン・セーンのTESCO LOTUSと言ったらわかってもらえました(TESCO LOTUSというわかりやすい目印があって助かりました…)。
また、88番の逆方向に乗ると、ナコーン・パトムへも行くことができました。正確な降り場はナコーン・パトム駅の一本手前の大通りPhaya Kong Roadでした。
なので、ナコーン・パトムからウトンへ向かいたい場合は駅の付近に乗り場があると思います。
今回バンコクからは乗らなかったので、バンコクでのこの路線の乗り場の場所は不明です。もしバンコクからウトン博物館へ向かいたい場合は、現地の詳しい人に聞いてください…。
バンコクからカムペーン・セーンまでの行き方はこちら:
バンコクからカムペーン・セーンへ、初めてのロットゥーで
バンコクからカムペーン・セーンまでの行き方はこちら:
バンコクからカムペーン・セーンへ、初めてのロットゥーで
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