台南400年で盛り上がる2024年、オランダ豆のスープをいただく



ネットの記事曰く、台南には「オランダ豆のスープ」があるらしい。オランダ東インド会社が台南の安平に拠点を築いてから400年の節目を迎える2024年の台南で、オランダと関係のありそうなものがあるならば是非味わいたい…と台南へ行った時のお話です。


台南400で盛り上がった2024年の台南

ゼーランディア城 熱蘭遮城(安平古堡)

2024年の台南はオランダ東インド会社が安平にゼーランディア城を築いてから400年という節目を迎え、街全体で様々なイベントが催されていました。そんなアニバーサリーイヤーだったこともあり、なんだかんだで今年は3度も台南を訪れる機会がありました。

ゼーランディア城 熱蘭遮城(安平古堡)の赤煉瓦

せっかく2024年の台南へ行くので、なにかオランダと関係のある台湾の料理があるのならばぜひ食べたいと思い調べたところ、「オランダ豆のスープ」という台南の昔ながらの食べ物が見つかりました。

台南名物?オランダ豆のスープとは…?

友誼香腸熟肉

10月のある日、ネットで見つけた”オランダ豆”を使ったスープという未知の料理を求め、その記事で紹介されていた友誼香腸熟肉(map)というお店へ向かいました。

参考記事
友誼香腸熟肉


友誼香腸熟肉

そもそも看板料理の「香腸熟肉」も初めて聞く名前でしたが、どうやら北部で「黑白切」と呼ばれる料理と同じ概念の食べ物のようです。

店頭のショーケースに様々な加熱済みの食材が並んでおり、希望の品を店主に告げます。香腸熟肉と料理名にも出てくる「香腸」とはソーセージのこと。他にも内臓は豚の様々な部位が用意されていたり、魚の皮やタコなどの魚介もありました。

友誼香腸熟肉

友誼香腸熟肉

絵で示されるメニューがかわいいですね。

友誼香腸熟肉

食べたい食材を選ぶと、店主が一人分を切り分けてくれます。それらをつまみに、ご飯やスープを付け合わせに選んで自分用の定食を完成させていきます。(店内の冷蔵庫には台湾ビールも置かれていたので、香腸熟肉をつまみに飲むこともできそうです)

友誼香腸熟肉

香腸熟肉、滷肉飯

私が今回注文したのは魚の皮、イカ、大根と、滷肉飯。香腸熟肉はしょうゆやわさびなどを調合したタレにつけていただきます。

豆のスープ(碰風豆湯)

そして本日の主役である”オランダ豆”のスープこと「碰風豆湯」がテーブルに運ばれてきました。

オランダにもエルテンスープというペースト状にしたえんどう豆を使ったスープがありますが、台南のオランダ豆スープ「碰風豆湯」はそれとは大きく異なり、大根と豚の骨を2時間煮込んだ出汁が使われるという台湾ではよく見られるタイプのスープで、その出汁で豆や大根、厚揚げを具材として加えて煮込んでいきます。お店によってはモツが入ることもあるよう。仕上げに香草(パクチー)やすりおろしにんにく、胡椒をかけて完成です。

さて、このスープのどこにオランダ要素があるのでしょうか?

台南で「オランダ豆」のスープが生まれるまで


17世紀、中国との貿易を求めたオランダ東インド会社は福建と台湾島の中間にある澎湖に拠点を作りました。その後1624年に台南の安平にゼーランディア城を建設を開始し、南洋、日本、中国と貿易を行いました。

Johannes Janssonius作成の南シナ海周辺地図

当時オランダ人は農業を強化するため中国から漢人を台湾へと呼び寄せ、サトウキビを栽培させました。そして製品として蔗糖や、鹿の皮などを台湾から輸出していました。

鹿の皮 台南・麻豆の蕭壠園區の展示より

オランダ統治時代に農業を手助けする牛が導入されたり、豌豆(えんどう豆)、釈迦頭、トマトなどの新しい作物も台湾に持ち込まれました。

故宮博物院の特別展「時代を超えて−海から見た16世紀の東西文化交流」展示品

台湾語ではえんどう豆のことを現在でも「荷蘭豆 huê-liân-tāu」(オランダ豆)と呼ぶらしいのです。オランダ時代に持ち込まれた豆だからというのが由来なのでしょう。

教育部台湾の台湾語常用語句辞典


実際にはこの”オランダ豆”が指す豆は厳密にはえんどう豆の変種で、原産地は中国なのだそう。そのためオランダ人はこれを「中国豆」と呼ぶという話もあるらしいのです。(この話のソースは見つけられませんでしたが…)

ともかく、台南で”オランダ豆”と呼ばれているのはえんどう豆の一種で、中国が原産。オランダ時代に台湾へもたらされたためか、”オランダ豆”(荷蘭豆 huê-liân-tāu)の異名を持つ…という話でした。

現代の台南では碗粿や肉粽、香腸熟肉といった伝統的な食べ物と一緒にこのオランダ豆のスープをいただくのが習わしだそうです。

ちなみにオランダ豆のスープはお店によって「碰風豆湯」「椪豆湯」「豆仔湯」と、呼び名にバリエーションがあります。

終わりに

プロヴィンシア城 赤崁樓

オランダ東インド会社が台南の安平に拠点を築いてから400年、そんな記念の年に台南でオランダと少し関係のある食べ物を見つけて喫食するお話でした。現代の台湾社会ではオランダ時代の残り香のようなものってあまり感じられないのですが、調べたら他にもなにか面白いものが見つかるかもしれませんね。




17世紀の食べ物関連では、こちらの土魠魚のお話も興味深かったです。日本の南蛮漬けに近い概念の西洋由来の調理方法です。



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