高雄グルメ100年の旅:老舗かき氷から戦後の沙茶火鍋、新住民食堂まで


台湾南部の高雄は港湾都市として発展し、時代ごとに様々な人が暮らすようになりました。今回の記事では、高雄の特色ある食堂を巡りながら、食の角度から高雄の歴史を眺めていこうと思います。





老舗かき氷:高雄婆婆冰

高雄婆婆冰 招牌綜合冰

「ここのかき氷を食べたことがなければ高雄人にあらず」とも言われるらしい「高雄婆婆冰」。高雄でも早くから開発された歴史ある街・鹽埕エリアにある老舗のかき氷店です。

私は高雄出身の友人に案内され訪れたのですが、日本で入手できるガイドブックなどにも紹介される有名店のようです。一説によると創業は1934年で、100周年へのカウントダウンも始まっています。

高雄婆婆冰

この日に注文したのは「招牌綜合冰」。蜜餞という塩漬けなどにより保存加工を施した各種フルーツが満載されたかき氷です。

青マンゴーを砂糖と塩で漬けた情人果、スターフルーツ、パイナップルなどのフルーツを塩漬けにしたもの、小豆や緑豆、椹(くわのみ)のジャムがトッピングされているのですが、新鮮なフルーツを使ったものとは違って”しょっぱく、且つ酸っぱい”味なのが特徴です。

この塩気と酸味が、大量に汗をかいた体にはたまらなく美味しく感じられました。高雄の暑い気候における完全食だと思います。

高雄婆婆冰

高雄婆婆冰

高雄婆婆冰 (map)
高雄市鹽埕區七賢三路135號




潮汕移民がもたらした沙茶:汕頭天天沙茶火鍋

天天沙茶火鍋

中国広東省の潮州や汕頭という地域からやってきた、南洋のサテソース由来の調味料「沙茶醬」。それを生かした鍋料理「沙茶火鍋」の老舗が高雄の鹽埕にあります。

沙茶火鍋

「沙茶醬」とはマレーシアやインドネシアで親しまれている肉の串焼きにつけるサテソースを元に、現地に居住していた華僑がアレンジを加えて生み出した調味料のこと。

ピーナッツや小魚、各種スパイスを油で炒めて作るペースト状の調味料で、炒め物の味付けや鍋料理のつけダレなどにしていただきます。

以前基隆の咖喱沙茶炒麵についての記事でも言及しているのですが、沙茶醬を台湾にもたらしたのは、戦後に潮州・汕頭から渡ってきた華人のグループです。


基隆の咖喱沙茶炒麵の記事を書いてからずっと行く機会をうかがっていた高雄の老舗「汕頭天天沙茶火鍋」に、ようやく行くことができました…!

天天沙茶火鍋

高雄・鹽埕にある「天天」をオープンしたのは潮汕地域出身の華人夫婦。当初は「天天沙茶牛肉」として1947年に創業し、主に沙茶牛肉などの料理を提供していましたが、67年に店名を「汕頭天天沙茶火鍋」とし、鍋料理の専門店となったようです。

参考記事

自家製沙茶醬(右の碗)

沙茶火鍋は私の予想に反して、鍋のスープに沙茶醬が入っているのではなく、扁魚出汁のスープで具材を煮込み、沙茶醬をつけダレとしていただく料理でした。

画像左の碗に入っているのは鍋の湯底と同じ扁魚出汁のスープで、お店の方いわく「まずはスープの味を確かめてみて」。右の碗に入っているのがつけダレとして使う自家製の沙茶醬です。

天天沙茶火鍋メニュー

注文は人数に応じたスープ(湯底)代+食べたい具材を注文していくスタイルでした。潮汕の名物である肉丸や魚丸や、自家製の揚げた湯葉(豆皮)は欠かせない具材です。

沙茶火鍋

牛肉はスープに数秒間くぐらせるだけでOK。スープ自体に塩気があるので、レタスをさっと湯がいたのもとても美味しかったです。

5人で行って、一人当たりの支払いは400〜500元程度でした。(飲み物代は含まず)

牡蠣

天天沙茶火鍋 (map)
高雄市鹽埕區七賢三路240號



老舗ファストフード:小西門燉肉飯店

小西門燉肉飯店

1977年にオープンした「小西門燉肉飯店」は”高速餐廳”を売り文句にしたファストフード店。台湾にマクドナルドがオープンしたのが1984年なので、それに先んじて素早く料理を提供する、という概念を打ち出した食堂といっても良いかもしれません(?)

参考記事
吃。高雄美食|鹽埕區。「小西門燉肉飯-高速餐廳」傳承三代飄香超過45年歷史,古早味便當老店充滿懷舊的滋

小西門燉肉飯店のメニュー

提供しているのは「便當」(弁当)に当たるメイン料理+副菜のスタイルの料理です。カウンターでメイン料理を注文し、副菜はガラスケースの中のおかずを指差し注文します。

小西門燉肉飯店のカウンター

レトロな写真付きメニューにシーリングファン…。好きな人にはたまらない雰囲気を残すお店でした。

梅干扣肉飯


小西門燉肉飯店 (map)
高雄市鹽埕區鹽埕街43號


モスク隣のハラール牛肉料理屋:清真潮州牛雜

高雄モスク

台北モスクに続き、台湾で二番目に古い1949年開設の高雄清真寺(高雄モスク)の隣に並ぶハラールの牛肉料理店「清真潮州牛雜」。

清真潮州牛雜

ネット上でこのお店の来歴などの情報は見つけられなかったのですが、「潮州」「清真」(ハラール)の看板に惹かれて入店しました。

清真潮州牛雜

牛雜とは牛の内臓系の部位ですが、牛肉のメニューもありました。ここでも「沙茶」味のメニューが登場しており、潮州と牛肉、沙茶の組み合わせは定番なのだなと感じます。

牛肉燴飯(小)60元

注文したのは牛肉燴飯。牛肉のあんかけご飯です。肉が硬くならない上手な火入れで、青菜の食感もアクセントになり最後まで飽きません。台湾人には「太鹹」(しょっぱすぎ)と言われそうな味付けでしたが、私はおいしくいただけました。

牛肉の滋味豊かなスープは一回おかわり無料とのこと


清真潮州牛雜 (map)
高雄市苓雅區建軍路13號



駅前インドネシア料理屋:Bali Store印尼八東店

Bali Store 印尼八東店

高雄は港に工場など働き口が多く、東南アジアからの労働者も数多く暮らしており、彼ら移工向けのお店が集中するエリアが各地に存在します。高雄駅前もそんなエリアで、インドネシアやベトナムの食堂や雑貨店がたくさんあります。

「Bali Store 印尼八東店」もそういったお店のうちの一つで、高雄駅からすぐのところにあります。

台湾の移工が集まる繁華街の例にもれず、平日はやや閑散としており、日曜日にもっとも賑わうタイプのエリアおよびお店でした。

Bali Storeの料理

Nasi Rendang sapi(巴東牛肉 ルンダン)を注文し、副菜を数種類選ばせていただきました。料理は上品な味で美味しく、インドネシア華僑の店主は親切な方でした!

Nasi Rendang Sapi ナシ・ルンダン・サピ 巴東牛肉 


Bali Store印尼八東店 (map)
高雄市新興區南華路214號


廟と融合したフィリピン料理屋:Rizza Shoppee

廟と融合したフィリピン料理屋

高雄に廟と融合したフィリピン料理屋があるらしい…


このネット記事で言及されていたそのお店は一体どこにあるのだろうとネット上の情報を探していたのですが一向に見つからない。

高雄出身の友人にも尋ねてみたもののどこの廟なのかわからず困っていたところ、その友人が上述の記事を公開したメディアに直接問い合わせてくれ、無事に場所を突き止めることができました。(最初からこうすれば早かった)

廖添丁殿と融合したフィリピン料理屋

フィリピン料理屋と一体化しているという廟があるのは港を有する前鎮區。漁業博物館そばにたたずむ廖添丁殿がその場所でした。

この辺りは港に近く工場も集まっており働きに来ている東南アジア出身の労働者が多く、このお店以外にもインドネシア系の商店などを見かけました。

Rizza Shoppee

ようやくたどり着けたものの、運悪くこの時は営業しておらず無人の状態でした。それにしても一体どういった経緯で廟の敷地内にフィリピン料理屋を開くことになったのでしょうか。


台湾の廟と一体化している

最初に足を運んだ土曜日の昼は営業していなかったので、翌週の金曜日の夕方に再訪問。すると今回は営業していました!

店員さんもお客さんもみなフィリピンの方で、中国語もやや通じにくかったのでドキドキしながら料理を指差し注文。

Rizza Shoppe


Rizza Shoppeeの料理

Inun Unan(イノンオナン)という茄子と白身魚をお酢で煮込んだ料理をいただきました。

Inun Unan イノンオナン


Rizza Shoppee (map)
高雄市前鎮區漁港東一路1之6號 (廖添丁殿)


おまけ

前鎮區では港町・工業都市らしい高雄の姿を見ることができる

高雄滞在中に他に訪れたお店を紹介します。







終わりに

港を有するため早くから工業や流通の要衝として栄えた高雄には、日本統治時代に始まる老舗のかき氷店から戦後に台湾へ渡って来た潮州汕頭の華人、90年代以降に受け入れが始まった東南アジアからの労働者向けのお店など、時代ごとに高雄で暮らすようになったエスニックグループの多様性が反映されていました。

特に沙茶醬を台湾にもたらした潮汕人による老舗沙茶火鍋店の汕頭天天沙茶火鍋や、台湾の廟と一体化したフィリピン料理屋は高雄で訪れた食堂の中でも特に印象に残るお店でした。



参考記事

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