福和橋蚤の市で掘り出し物さがし:ITALY銘入りの景徳鎮碗


以前台南で偶然「THAILAND」銘の入った青花杯に出会ってから、冷戦期に中国から景徳鎮の焼きものを輸入できなかった台湾のために産地をごまかした製品があることを知り、そのバリエーションである「ITALY」銘の景徳鎮を探していました。

今回は台湾・新北市にある福和橋蚤の市で見つけた「ITALY」銘の景徳鎮の青花碗と、蚤の市について紹介します。


台北郊外の福和橋蚤の市へ

福和橋の上から「福和觀光市集」を望む

台北・公館から福和橋を渡ってすぐ、自転車で10分程度のところに毎週土日に開催される蚤の市があります。正式名称は「福和觀光市集」。月曜以外は毎朝伝統市場として野菜や魚、肉などの生鮮食品が売られる市場となっていますが、土日にはそこに日用品、古着、骨董その他なんでもありの蚤の市が登場します。

市場の入り口

私の愛読しているブログ「そこはかノート–台湾つれづれ–」さんでその存在を知り、自分の住んでいるところから近いということで割と頻繁に通っています(休日は福和橋蚤の市〜ミャンマー街が定番のルーティン)。

そこはかノートさんの福和橋蚤の市の記事はこちら

入ってすぐの生鮮食品エリア

市場の営業時間は5:00am~12:00となっていますが、私が訪れるのはだいたいいつも9時から10時頃。早起きが苦手なのもありますが、9時くらいがお店も出揃いにぎわっています。11時頃からは片付けを始めるお店も出てきます。

蚤の市エリア

また、天気によってもお店の出店具合が変わってきます。雨が降っている日はお休みのお店も多いです。

ある雨の日

福和觀光市集(Facebook)

売られているのは食器、古着、古書、キッチン用品、工具類、骨董、賞味期限の近い食品など幅広く、この世の全てがあります。

賑やかな日の福和橋蚤の市

来ている客層も幅広く、地元民っぽいおじさんや近所の大学に通っていると思しき外国人の若者の姿もここでは珍しくありません。近年では日本の台湾好きの間で古い大同やエビ皿の知名度が上がったこともあり、日本人観光客の姿も見かけます。


鳩の休憩所と化しているブース

私が集めているような清代の庶民が使っていた青花瓷(染付磁器)のような古い中国のやきものや、霊芝紋の系譜にある近現代の青花瓷はここではあまり主流ではなく、やきものは台湾の少し古い食器類が多いです。

しかしある日、ずっと手に入れたかった「Made in Thailand」の系譜にある景徳鎮の青花瓷に出会ったのです…!

ITALY銘入りの景徳鎮碗との出会い

ITALY銘の景徳鎮青花碗

〜これまでのあらすじ〜

話はさかのぼること数年前、私は台南の茶荘で「THAILAND」銘のある青花杯に出会いました。

これが実は冷戦期に中国から景徳鎮のやきものを公式に輸入できなくなった台湾が、産地をごまかすために「Thailand」とあえて書かせた商品だったことを宜蘭の碗盤博物館の方に教えていただきました。
これを教えてくださった碗盤博物館では、ちょうど売店で産地を塗りつぶしたり「Made in Thailand」銘が入れられた景徳鎮のやきものを販売中だったのですが、その際に非売品だった「ITALY」銘の蛍手の青花碗も見せていただいたのです。

それ以来、自分もいつかこの「ITALY」銘の入った景徳鎮の蛍手碗に出会えたらいいな〜とぼんやり考えていたのですが、先日の福和橋蚤の市でとうとう実物に出会えたのでした。

過去記事:
Made in Thailandに隠された両岸関係:70年代の景徳鎮と台湾

景徳鎮の蛍手を見たら必ず裏の銘文を確認している

比較的年代が新しめの景徳鎮の蛍手(透かしの入った碗や皿、杯)は福和橋蚤の市でもいくつかのブースで取り扱いがあるほどで、それ自体は珍しくはありません。(永康街の茶荘や錦安市場などでも見かける)

福和橋蚤の市を散策中、蛍手を見かけたらとりあえず裏の銘文を確認するという作業は欠かさずに行っていたのですが、ほとんどは「中國 MADE IN CHINA」でした。

蚤の市は一期一会の世界でもあるので、たまたまその週に出店していたブースに「ITALY」銘を見つけた際には衝撃が走りました。

福和橋、あなどれませんね…。



福和橋蚤の市ではどんなものが売られているのか?


上述のITALY銘の景徳鎮青花碗の他に、福和橋蚤の市ではどんな商品が売られているのか?ざっくり紹介していきます。

食器類

台湾の少し古い食器類

食器類は台湾の少し古い(1970年代以降?)ものが多いです。もう少し時代がさかのぼる60年代の下絵付けの碗公なども扱ってるお店がちょこちょこあります。

大同のバラ柄を代表とする白地に花があしらわれた碗皿や杯は数も種類も豊富な印象です。自分はこの手のものにはまだ(まだ?)手を出していないので具体的な値段はわからないのですが、高くはないと思います。この手のものは街中の五金行にもデッドストックが眠っており、愛好の方も多いはず。

エビ皿やレンゲ、状態の良さはまちまち

画像右上の下絵付けの大碗は年代が少し古い

海芋(カラー)柄の皿

エビ柄は器種や絵柄、保存状態など物によって違いが大きい

黑松可樂のグラス

ミルクガラスのカップ&ソーサー

景徳鎮の蛍手や日本のお茶碗など

北投窯や鶯歌窯の碗かな

閃釉のカップ&ソーサーや、1950〜60年代の下絵付けなど

ホーローの盆や交通標識など

食器類は外国のものも若干あるものの、ほとんどは台湾製のものが多いかなという感じです。


服飾類

古着のワンピース

古着を売るお店も数多くあります。

お店に名前が付いていないので紹介するのが難しいのですが、生鮮食品市場に対して垂直に伸びているテントの入り口から数えて三本目あたりにある古着屋さんが結構好きです。季節によって夏服多めの時期や冬服多めの時期があったり、最近は服だけでなくオーディオ機器なども扱っているお店です。

夏服100元均一(ない時もあります)

シャツ100元均一

シャツ・上着100元均一

寄せ書きの入った台湾の某中学校の制服

値段は老闆娘に要確認

冬場には厚手の上着も並ぶ

ワンピースコーナー

上の8枚の画像は全て同じ店舗のもの。100元均一のコーナーもあれば、1枚600元程度のシャツなども置いていたりします。派手な柄シャツなどが欲しい方はぜひのぞいてみてください。

靴いろいろ

別の古着ブースの「猫」シャツ

掘り出し物を探す人々

かなりお値打ちなものもある

生鮮食品市場と平行のテントの古着屋。ほぼ100元均一


骨董品・美術品

玉製品や焼き物を並べるお店

美術品寄りの骨董も売られています。多いのは玉や紫砂壺など。真贋についてはわかりません。複製品や復刻版などの可能性もあります。

青磁、染付、色絵に紫砂、天目など

清代の青磁匙(購入しました)

公雞碟(購入しました)

美術品ではなく、昔の人々の日用品の骨董も見かけることがあります。清代の青磁匙や公雞碟を入手。

青磁匙は台湾西部の清代の遺跡でも出土することがあるものです。

公雞モチーフは歴史が古く、明代(もっと遡るか?)から現代まで、絵柄を変えながら今でも香港や東南アジアの華人地域では親しまれている文様。残念ながら台湾では公雞モチーフの文化は途絶えてしまっています。

ちなみに、この手の染付小皿(青花碟)を台湾で手に入れようと思ったら、鶯歌の寶裔軒(map)という骨董店がおすすめです。

印青花の碗

霊芝紋の皿(右下)

いぬちゃん


紙類

古い国民党関連のものを扱う店は多い

紙製品、とまとめましたが、バリエーションはかなり豊富です。昔の人の通帳や絵葉書、写真にネガ、古書、国民党関連の様々な書類・カード類など、想像したこともなかった品に出会えます。昔の人の個人情報が満載。

古書、手紙など

大学進学塾による三民主義の教科書

中華民國軍人之友社勞軍捐款收據

古い朝日新聞


そのほか…

文革磚と書かれた真っ赤な雲南の茶葉

雲南の茶葉は扱う店も何気に多い

写真のネガ。他人の人生の一ページ


誰かの祖先の写真


お店の人の祖先ではないらしい。

オーディオ機器を吟味する客と店主

楽器、人形、住所のプレート、自転車につけるやつ

図録を真剣に吟味する客

交通標識も買える

第二次世界大戦時の軍人装備が入った木箱

軍用品がつまった木箱

レコード

中国西南部っぽい服を扱うお店

同上。刺繍が美しい

ブリキの看板

ノートパソコンには目もくれず水を飲むいぬちゃん

家電など

こういう風になんでもある感じが蚤の市の醍醐味です。日によって面白いものと出会える時もあれば、イマイチの日もあります。


ディープエリア

売り物なのか

蚤の市エリアを奥へ進んでいくと、廟やオープンエア散髪があり、さらに進むとよりディープなエリアがあります。ガジュマルのふもとにうず高く積まれた様々なモノたち…。

と、インパクトがあるのはここくらいですが、その先には玉や小道具を売るお店が多少続きます。

パラソルの下に並ぶ品々

台湾1950〜60年代の下絵付け碗

ケースに詰められ、積まれた食器類

玉製品たち

玉製品が整然と並ぶお店


これまでの購入品

古着いろいろ

福和橋蚤の市には私が集めているような清代の庶民が使っていたような粗製の染付磁器はあまりないのですが、ここへ通ううちに他のジャンルにも興味が広がっていきました。

ここで私がよく購入するのは古着や少しレトロな食器類。古着のシャツは100元から、まれにある高いもので600元、緑のコートはなんと50元でした。

食器いろいろ

レトロな琥珀色のガラスのコップや碗、昔の冰菓室で使われていた味王「VE WONG」ガラスの器、ミルクガラスの碗など。

昔ながらの冰菓室で使われる目盛りのついたガラスコップや、閃釉の杯など、もし出会えたら入手したいものが次々に出てきます。


福和橋蚤の市への行き方



福和橋蚤の市(正式名称:福和觀光市集)は台北市と新北市の境目にあります。台湾大学のあるMRT公館駅から徒歩やYoubikeで向かうのが早いです。

福和橋入り口(公館側)

福和橋には南側(台北・公館から向かう場合は左手)に歩行者および自転車用のレーンがあり、安全に橋を渡ることができます。

橋を渡り終えると、エレベーターで地上に降りることができます。降りたら「福和橫移門」を超えて、川の方へ進みます。

福和橫移門

橋の下は市民の運動場になっている

橋に沿って進んでいくと、福和觀光市集の入り口が見えてきます。バイクや自転車も駐車できます。Youbikeステーションは橋を降りて環河東路を左手に少し進んだところにあります。

終わりに

福和橋蚤の市

あらゆる商品が並び市民の憩いの場にもなっている福和橋の蚤の市。毎週土日は掘り出し物を探す人々で賑わいます。

私もしばらく通う内に欲しかった「ITALY」銘の入った景徳鎮の蛍手碗に出会うことができました。

骨董好きに限らず、お値打ちなものや台湾のちょっと古いものを探している方は楽しめる場所だと思いますので、ぜひ訪れてみてください。




参考リンク

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