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台湾には東南アジアや東アジアから移住して来た華僑が数多く暮らしています。筆者(Follow @amikawa125)が通う中和のミャンマー街はその代表的なコミュニティーですが、他にもインドネシア・ベトナム・フィリピン・韓国など、様々な国から台湾へ移住して来た華僑が○○街と呼ばれるようなコミュニティーを形成しています。
今回は偶然台北市内で見つけた「インド華僑」の老闆が経営しているインド料理屋や、インド華僑についてのお話です。
インドに暮らす華人は現地で独自のインド中華メニューを発展させました。
ある日、友人に西門町にインド華僑の老闆がやっているインド料理屋があると教えてもらい、さっそく現地へ行ってみました。向かう先は萬年商業大樓地下のレストラン街。
台北市内の西門町で営業中の「Calcutta 加爾各答印度料理」(map)という名のインド料理屋へ。事前に調べた情報によると老闆はインド華僑ということで間違いなさそうです。
台湾ではインド料理屋は街の東南アジア食堂などと比べると、総じてレストラン然としており、価格帯も高めの傾向があります。
Calcuttaのメニューは一般的なインド料理で、いわゆる「インド中華」的なメニューは扱っていないようでした。
台北の夜市で出会ったインド華僑
ミャンマー街に通う生活を続ける中で、台湾にはミャンマー以外の国から移住してきた華僑の方はいるのかと疑問に思い調べてみると、ベトナム華僑やフィリピン華僑、韓国華僑にインドネシア華僑の方が台湾に移住してコミュニティーを作ってきたことがわかってきました。
彼らは韓国を除けば基本的には東南アジアに僑住していた華僑が中心ですが、2020年のある日、台北市内の南機場夜市でインド華僑の老闆がやっているインド料理屋を発見しました。
南機場夜市のインド料理屋でほうれん草のカレーとナン。前回老闆がインド華僑ということを教えてもらい、今回さらに尋ねたらコルカタの客家人だと判明。老闆より上の世代だと台湾に移住するインド華僑も結構いたのだそう#台湾の南アジア料理 #今日の南機場夜市 https://t.co/krqGeWBJPv pic.twitter.com/c4xk7V4jwr
— amikawa (@amikawa125) October 10, 2020
その時初めて台湾にインド華僑の方がいることを知り、インド華僑についての先行研究を探してみると、インド華僑のほとんどはコルカタ出身の客家人であることがわかりました。
悲報。南機場夜市のインド華僑のお店、無くなる…#今日の南機場夜市 #台湾の南アジア料理 https://t.co/C5nrWgN1aN pic.twitter.com/UbJl2oLaRw
— amikawa (@amikawa125) January 11, 2021
しかしこの南機場夜市のインド料理屋はその後すぐに店をたたんでしまったので、台湾に暮らすインド華僑の手がかりは無くなってしまいました。
インド華僑(客家)とは…?
研究によるとインドに華人が移住し始めたのは17世紀のこと。イギリス植民地時代の首都であったコルカタ南東郊外のタングラ(Tangra)地区に華人の移民が集中していました。彼ら華人は広東省籍の者が多く、特に梅県の客家人が多かったようです。特に辛亥革命の1911年からコルカタの華人は増加しました。
コルカタにはタングラ(Tangra / 塔壩)とティレッタ・バザール(Tiretta Bazar)の2つのチャイナタウンがあります。後者は今ではチャイナタウンとしては衰退しているものの、1962年に中印戦争が起こるまでは繁栄しており、会館・廟・華文学校などの華人の伝統的な施設が集中しています。一方のタングラ地区は1980年代にはコルカタ華人(客家)が従事した皮産業の最盛期を迎えました。のちに皮産業は衰退し、客家の人々は中華レストラン経営などへと産業を転換したようです。
1949年には中国で国共内戦が起こり、共産党政権から逃げて来た華人の難民がコルカタにも押し寄せたため、華人人口は3万人を超えたと言われています。その後コルカタの華人は北米(カナダのトロントなど)やヨーロッパへと再移住したため、コルカタの華人は減少しているようです。
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桃園市で行われたHakka Expo 2023 |
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インド客家の紹介(Hakka Expo 2023) |
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インドの客家ヌードル(Hakka Expo 2023) |
インドに暮らす華人は現地で独自のインド中華メニューを発展させました。
インド中華にはchow mein(炒麺)、Hakka noodle(客家ヌードル)、chopsuey(チャプスイ)、spring roll(春巻)、noodle soup(湯麺)、hot and sour soup(酸辣湯)、Mancurian(マンチュリアン)などのバリエーションがあります。
南洋華僑の食堂にもありそうな中国華南地方にルーツを持っていそうな麺料理だけでなく、インドで独自に生まれた「マンチュリアン(満州風)」という具材を中華風の甘酸っぱいソースで絡めた料理などがインドで中華料理と認識されているようです。
インド華僑はなぜ台湾へ?
インドにも華人が集まるエリアがあることはわかりましたが、ではなぜインド華僑(客家人)が台湾へ移住して来ているのでしょうか?調べたところ、台湾・中和のミャンマー街や木柵のベトナム華人コミュニティーのように、ある時期にまとまって集団で当地の華僑が台湾へ移住して来たという経緯はインド華僑には特にないようです。
しかし1962年に中国とインドの関係が悪化した際に多くの華僑がインドを離れ、欧米やオーストラリアなどへの移住が相次いだようです。その一部のインド華僑が台湾へも渡ってきていたということなのかもしれません。また、他の国出身の華僑同様に、70〜80年代以降も華僑学生の身分で台湾へ渡るインド華僑は一定数いるようです。
冒頭で紹介した南機場夜市のインド料理屋の老闆の話によると、以前は台湾にもそれなりの人数のインド華僑がいましたが、台湾から更に欧米などへ再移住した者も多く、今台湾にはあまり多くのインド華僑は残っていないとのことでした。
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台北市西門町の萬年商業大樓 |
ある日、友人に西門町にインド華僑の老闆がやっているインド料理屋があると教えてもらい、さっそく現地へ行ってみました。向かう先は萬年商業大樓地下のレストラン街。
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萬年大樓の地下レストラン街 |
台北のインド料理レストラン「Calcutta 加爾各答印度料理」
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Calcutta 加爾各答印度料理 |
台北市内の西門町で営業中の「Calcutta 加爾各答印度料理」(map)という名のインド料理屋へ。事前に調べた情報によると老闆はインド華僑ということで間違いなさそうです。
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Calcutta 加爾各答印度料理 |
台湾ではインド料理屋は街の東南アジア食堂などと比べると、総じてレストラン然としており、価格帯も高めの傾向があります。
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Calcutta 加爾各答印度料理のメニュー |
Calcuttaのメニューは一般的なインド料理で、いわゆる「インド中華」的なメニューは扱っていないようでした。
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パラクパニールだと思ったけど緑色をしていないカレー |
台湾のインド料理屋はレストラン然としているため、カジュアルな小吃店と比べると老闆に気軽に話しかけることができないのが難点で、今回訪れた際には特に店員さんにお話を聞くことはかないませんでした。
インド料理屋の他に、台北市内にはTrinity Indian Store 印度食品香料專賣店というインドの食品や雑貨を扱う輸入品店があります。こちらも店主はインド華僑(客家)だという情報があります。
東區にあるインド食品店《Trinity Indian Store 印度食品和香料專賣店》へ。インドのインスタント食品やスパイスなどが売られていました。ヘナを見ていたら、ヘナを教えているというインドの女性と知り合いになれました🥰#台湾の南アジア料理https://t.co/cWjRdq9iWA pic.twitter.com/jSs30UPPS5
— amikawa (@amikawa125) October 17, 2020
終わりに
ミャンマー華僑やベトナム華僑などと比べると、台湾の特定の場所に集まっているというようなコミュニティーがないため、謎に包まれている在台インド華僑の存在。今回はこれまでに訪れた台北市内でインド華僑の方がやっている料理屋を紹介しました。インターネット情報によると、台湾には他にも台北市の天母、桃園や南投にインド華僑(客家)の方がやっているインド料理屋があるとのこと。なんとインド華僑の方がやってる茶餐廳が台北にあるという話もあります。今後機会を見つけて訪れてみたいと思います。
参考記事
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