南洋華人の旅社に泊まりたい:バンコクSri Hualampong Hotel 新華南峰旅社 โรงแรมศรีหัวลำโพง


2024〜25年の春節の休みに久しぶりにタイへ行きました。以前の記事ではバンコクの華人系朝食店と、潮州由来の粥ぐび文化を体験しました。

▶︎バンコクの華人系朝食店・安樂園で安楽し、ショップハウスをめぐる

今回はバンコクの中華街ヤワラートにも近い、フアランポーン駅すぐの所にある老舗旅社に泊まったお話です。

南洋華人の旅社に泊まりたい

フアランポーン駅

沢木耕太郎の深夜特急に影響を受け、旅行人ノートと下川裕治の本を片手に2000年代初期にバックパッカーをやっていた自分にとって、バンコクの中華街ヤワラートに近いジュライロータリーのジュライホテルや楽宮旅社、台北旅社という名前は伝説的な存在でした。

実際には私はそのいずれにも泊まったことはなく、カオサンそばの寺裏に通っていたのですが、南洋で目にする華人の「旅社」という文字には惹かれるものがありました。

初めてバンコクの華人系旅社に泊まったのは2009年頃のこと。それがフアランポーン駅そばのSri Hualampong Hotel 新華南峰旅社でした。2024〜25年の春節休みには約15年ぶりにこの旅社を再訪してきました。

フアランポーン駅周辺のショップハウス

フアランポーン駅から徒歩5分以内という好立地に建つSri Hualampong Hotel 新華南峰旅社 โรงแรมศรีหัวลำโพง。

Sri Hua Lamphong Hotel 新華南峰旅社

2009年頃に泊まった時と何も変わっていない外観。タイ語、英語、中国語で宿の名前が記される看板に南洋華人を感じます。

新華南峰旅社の味のある看板


Sri Hua Lamphong Hotel 新華南峰旅社 โรงแรมศรีหัวลำโพง

445 Rong Mueang Rd, Rong Muang, Pathum Wan, Bangkok 10330 (map)

Sri Hua Lamphong Hotel 新華南峰旅社

建物は3階建てで、客室は全30室。バンコクに到着した日はあらかじめネットで予約していたゲストハウスに泊まり、その日に新華南峰旅社を訪れ、翌日の部屋を予約しました。

Sri Hua Lamphong Hotel 新華南峰旅社

投宿

新華南峰旅社のフロント

前日に予約しておいたのですぐにチェックインさせてもらえました。

フロントの方は中国語(普通話)を話されず、片言の英語でコミュニケーションを行いました。「この旅社はいつからあるのですか?100年くらい?」と尋ねたら「だいたいそのくらい」とのことでした。(もっと具体的な年数を聞くならこの尋ね方は悪かった…あと自分がタイ語ができないのが悪い)

確かな情報なのか不明ですが、この記事のコメントに、「オーナーの父母は海南島から来た華人」という書き込みがあります。

新華南峰旅社のロビー

新華南峰旅社の広々としたロビー。中央は広間になっており、奥に階段が設けられた開放的な作りです。天井も高い。

客室へ上がる階段


新華南峰旅社の内部へ

ねこちゃんいる…!

少し軋む木製の階段を上がり二階へたどり着くと、なんと一匹のねこちゃんの姿が…!!!なんというホスピタリティ。嬉しいですね。

階段の踊り場からロビーを見下ろす

階段はそのまま三階へと続いて行きますが、私の部屋は二階でした。

ねこちゃんにご挨拶

ねこちゃんに指の匂いを嗅いでもらいます。


当時のまま…を感じたい

二階の共有部分

中央に階段があり、その両翼に客室が並びます。フアランポーン駅に面した道路側と、その反対側にベランダがあり、風が吹き抜けていく作りになっています。階段部分の床は板張り、前後の客室前の廊下はタイル張りです。

フアランポーン駅方向のベランダを望む

裏手のベランダ

ある投稿にはこの建築は南洋のショップハウスに見られるようなコロニアル建築のSino-Portuguese様式だと書いてありましたが、実際には外観・室内共にそのような装飾は見られず(一応正面は騎樓になっていました)、どちらかと言うと機能的なモダニズム建築っぽい感じ。でも室内の板張りの部分に伝統的な感じも混ざっており、とても興味深いです。いったいいつ頃建てられた旅社なのでしょうか。

涼しげな透かしブロックの壁

廊下の中ほどには共有のトイレがあります。

共有部分にあるトイレ

内装は木製で、昔ながらのバンコクの建築みを感じる

扉の上部は風通し用の隙間が空いています。

ある部屋はねこちゃん専用ルームとなっており、先ほどの三毛ちゃんとは別のねこちゃんがくつろいでいました。かわいいですね。

ねこちゃん部屋がある

宿泊したのは階段のそばの部屋

私が宿泊したのは階段そばの部屋です。観音開きの木製の扉で、鍵は南京錠を使います。

シングルルーム

シングル300バーツの部屋です。ベッドと鏡台、テーブルとプラ椅子、流しがあり、窓にはカーテンがわりのエチオピア航空のブランケットがかかっています。

奥にはバスルームが付いています。シャワーはなく、桶に水が溜まっているのを洗面器ですくって浴びるタイプ。便器は洋式でしたが便座がありませんでした。グーグルマップの他の写真を見ると、和式便器の部屋もあるようでした。

設備面はまずまずの年代を感じる作りで、少なくとも2009年に泊まった時から変わっていませんでした。

Wikipediaによると、「バンコクで水道や水洗トイレが普及したのはラーマ5世の治世後期、1897年公衆衛生局が設立され、同年に初めて公衆便所の建設を開始した」とあり、水洗便所の登場は「タイ王国にハイタンク式水洗便所が最初に普及したのは、1917年から1947年ごろ」となっています。水洗トイレが一般庶民の家庭にまで広がるのは第二次世界大戦後のことのようです。新華南峰旅社の水洗トイレは創業当初からあるのか、それとも戦後の普及期などにバスルームの改装が行われたのでしょうか?

掛け布団はなし

エアコンはなく、ファンのみだが快適だ

新華南峰旅社が実際開業何年目なのか、途中でリノベーションをしたことがあるのかは不明ですが、この宿泊体験は昔ながらの風情を味わえるものでした。


新華南峰旅社はいつからあるのか?

一応フロントの方に尋ねて「100年くらい」という回答を得ているものの、100年前のバンコクがどのような街で、どのような暮らしが営まれていたのかわからないため、自分では判断が難しいです。

ネットで新華南峰旅社について調べてみると、二つほど有力そうな投稿が見つかりました。


バンコク・デザインウィークの2025年2月の投稿によると、この旅社は創業100年越えと書かれています。

THEPLOCATION 同じくバンコク・デザインウィークのこちらの記事では、このエリアのガイドツアーのようなイベントの紹介と、旅社の写真が載っています。プロが撮影した新華南峰旅社の写真がとても良いです。現地では若い世代がこういう近代の歴史建築を再評価する機運があるのでしょうか。


もうひとつの2020年12月の投稿では、筆者Benjaminは新華南峰旅社は104年の歴史がある(1916年に当たる)とオーナーの話を聞いています。1916年はフアランポーン駅の竣工と同じ年に当たり、駅の創業と同時に誕生したという文脈が想像されます。



早朝のフライトで南部へ出発

ねこちゃんまたね…!

一泊の滞在を終え、翌日の未明には部屋を出発しました。この日は朝一番の国内線で南部の街ハートヤイ(Hat Yai 合艾)へ向かいます。始発の電車でドンムアン空港へ行くため、この旅社を選びました。鉄道駅の近くという抜群のロケーションが活きる瞬間です。

早朝の薄暗いフロント

宿泊料金はチェックイン時に支払っているため、誰もいないフロントに鍵を返しチェックアウトしました。

Sri Hua Lamphong Hotel 新華南峰旅社


終わりに

Sri Hua Lamphong Hotel 新華南峰旅社

華人が南洋に渡った19世紀以降、華僑がまずは身を寄せる会館という組織・施設がありますが、旅社という短期宿泊施設も当時から重要な場所だったと思います。

Sri Hua Lamphong Hotel 新華南峰旅社

Sri Hua Lamphong Hotel 新華南峰旅社

昔ながらの風情を残した新華南峰旅社。都市開発や経営者の事情も関わってくるので、「泊まって残そう」が可能なのかわかりませんが、末長く経営されることを願ってやみません。そしてまた南洋各地に残る華人系旅社に泊まる旅をしたいです。




参考資料:

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