2017年8月にラーチャブリー国立博物館へ行って来たので、今回の記事ではその博物館レビューと、個人的な所感を綴っていこうと思います。
ラーチャブリーはタイの西部にある街で、鉄道だとバンコクから2~3時間のところにあります。私はKamphaeng Saenからナコーン・パトム経由で鉄道で到着しました。
鉄道駅から博物館までは徒歩で20分ほど、メークロン川に面した場所にあります。バイクタクシーやトゥクトゥクなどを利用してもいいでしょう。
動画はこちら
ラーチャブリー国立博物館とは
ラーチャブリー国立博物館のこのピンク色が特徴の西洋建築は、もともと1922年のラーマ6世の時代に建てられ市役所(省庁舎)として使われていました。それを博物館に転用したのが1986年のことだそうです。
この博物館の展示はラーチャブリーの土地史に基づいています。
展示室は以下の5つのセクションにわけられています。
- ラーチャブリーの地理学と地質学
- ラーチャブリーの考古学と歴史
- エスニック・グループ
- ラーチャブリーの遺産
- 現代のラーチャブリー
このうち、当ブログでは2の「ラーチャブリーの考古学と歴史」に焦点を当てレビューしていこうと思います。
この展示はさらに以下の時代ごとに分けて展示が行われています。
- 先史時代
- Dvaravati期(6〜10世紀)
- クメール期(11〜13世紀)
- スコータイ・アユタヤ・トンブリ期(14世紀〜18世紀)
- ラッタナコーシン期(18〜20世紀)
もちろん展示品を近くでじっくり見たり、解説を読むには画像の解像度的に苦しいのですが、全体の雰囲気を感じることはできます。
先史時代
東南アジアの人々は先史時代からすでに独自の交易ネットワークを築いており、かなり広範囲の交流があったことが出土した遺物から知ることができます。ここではラーチャブリー近郊にて行われた考古学調査で発掘された、動物の骨で作られた装飾品や儀礼に使われた品が展示されています。
これはドンソン・ブロンズドラム(銅鼓)と呼ばれる、その名の通り銅でできたドラムです。北部ベトナムの紅河流域が発祥と言われるこの遺物は、東南アジアの各地で出土が確認されています。古いものでは紀元前6世紀から見られるようです。
Chinese Ceramic | Han Dynasty(漢代), 206BC-AD220 |
Dvaravati(ドゥヴァーラヴァティー)期(6〜10世紀)
Dvaravatiは当ブログでもメインに紹介していますが、6世紀ごろに興ったモン族によるタイの歴史時代最初の王朝です。関連記事:Dvaravatiのラベルが付いている記事
この博物館は民族の枠にとらわれず、ラーチャブリーの土地に基づいた歴史を、現地の出土品を添えて展示しています。
Dvaravatiの時期は現在よりも海水面が高く、バンコクは海中にあった一方、ナコーン・パトムやウトン、ロッブリーなどは海に面した交易の拠点として繁栄していました。
ラーチャブリーも当時の首都ナコーン・パトムからほど近い重要な都市として賑わっていたようです。特にこの博物館では、近郊のクブア(Khu Bua)で出土した仏像などが多数展示されています。
クブアの寺院の大型の模型が置かれています。現在の実物の遺跡では重要なレリーフなどは外されて博物館に収蔵されているため、完全な姿を見ることができない分、このような模型から遺跡発見当時の様子をうかがい知ることができます。
メークロン川で出水したGreen Glazed Bowl | Chinese ceramic, Tang Dynasty, 7-9 C. |
このセクションで見られるのは現地の人に作られた遺物に止まりません。ラーチャブリーが交易で栄えていたことの証左でしょう、中国の青磁もこの地で出土しています。
メークロン川で出水したGreen Glazed Ewer | Chinese ceramic, Song Dynasty, 10-12 C. |
ナコーン・パトムを中心としたタイ一帯に、Dvaravatiの大小の都市が栄えていた6〜10世紀は、中国では唐王朝や宋王朝が興っていた時代、日本では仏教伝来があった時代です。
宋王朝の陶器と言えば、台北故宮博物院に収蔵されている汝窯、「雨後天晴」と形容される薄い水色が美しい陶器が有名ですが、各地の窯元では宮廷用の洗練された器だけでなく、世界各地へ輸出するための青磁も作られていました。それがラーチャブリーにも届いていたようです。
金属製の仏像の頭部(Dvaravati様式) |
Dvaravatiの仏像の典型的な様式は緩やかに繋がった眉と厚めの唇と言われています。それは材質を問わず再現されています。
Votive Tablet |
調べて見たところ、日本とタイの友好130周年を記念して九州国立博物館で2017年4月〜6月に行われていた「タイ〜仏の国の輝き」特別展で展示されていたようです。他にもバンコクやナコーン・パトムの博物館の収蔵品も公開されていたみたいです。(同リンクからの出品目録PDF参照)
同様にタイのアユタヤにある日本村の博物館でも2018年に130周年を記念し、VR技術を使った展示がオープンしたようで、日タイ間の文化交流が行われています。
Authentic Ayutthaya comes to life at Japanese Village’s Virtual Reality Street Museum
クブアの遺跡で出土した、当時の寺院を装飾していたレリーフが並びます。
シヴァ像 |
例えばウトンの博物館でもリンガが展示されているし、そもそも仏教とヒンドゥー教の境目は曖昧なものでした。
参考記事:
DVARAVATI期の展示を見に、ウトン国立博物館へ | U-THONG NATIONAL MUSEUM
クメール期(11〜13世紀)
Dvaravatiの次に勢力を増したのがクメールの文化です。
ピマーイやロッブリーをはじめとしたタイ各地でも、この時期の遺跡が数多く残っています。
"Rediating" Bodhisattva Avalokitesvara, Kosinarai Ancient City |
Celadon Glaze Dishes | Longquan Kiln(龍泉窯), Song Dynasty(宋代) |
Green Glaze, Longquan Kiln(龍泉窯), Song Dynasty(宋代) |
White Glazed Wares | Yuan Dynasty(元代), Jingdezhen Kiln(景德鎮窯) 14-15 C. |
スコータイ・アユタヤ期(14〜18世紀)
スコータイは13世紀に中国雲南省あたりから南下してきたタイ族により興った王朝です。スコータイの遺跡があるあたりを中心として、タイを縦断するように領土が伸びており、ウトンやラーチャブリーを通過し、マレー半島半ばに及びました。この展示室でも中国産の陶磁器の展示が多いのですが、スコータイウェアーという地元の窯で焼かれた器も見られました。
川底に沈没した状態で見つかった様子を再現した展示方法。左側にある中央に魚の絵柄をあしらった皿がかわいらしいです。
Sangalok Wares |
Sukhothai Wares, 15-16 C. |
ラーチャブリー国立博物館へのアクセス
冒頭でも書いた通り、博物館はラーチャブリーの鉄道駅から徒歩で20分程度のところにあります。バンコクからラーチャブリーまでは鉄道で2〜3時間、バス(ロットゥー)でも2時間程度なので、日帰りではなく泊まりの方がゆっくり見学できていいと思います。
タイ美術局のRatchaburi National Museumのサイト
住所
325/1 Woradet, Tambon Na Muang, Amphoe Mueang Ratchaburi, Chang Wat Ratchaburi 70000
開館時間
9:00~16:00 (月・火曜休館)
チケット
外国人は100バーツ
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