台湾に来た多くの旅行者が食べるであろうかき氷やアイス。氷菓室は台湾人にとって小さい頃から親しんできた空間で、老舗の氷菓室には時を超えて様々な人の思い出がつまっています。
今回は台湾の東西南北各地の素敵な氷菓室を紹介し、台湾人にとって氷菓室とはどんな場所なのかを考えていこうと思います。
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南澳はタイヤル族の集落で、海に面した自然豊かな土地です。町にはタイヤル文化館があるほか、山の方へ行くと碧候溫泉があります。
南興冰店(map)は60年老店と言われているので、創業はおそらく1960年代?飾り気のない店頭に佇む巨大な製氷機と、壁の白いタイル、木の蓋がはまった冷凍庫が目を引きます。
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台湾で氷菓室が生まれるまで
台湾に氷菓子が生まれたのは日本統治時代に入ってからのこと。アメリカで1834年に製氷機が発明され、1883年に日本がこれを導入。台湾には1896年に英国商人の賀禮那(英語名不明)と茶商の李春生が大稻埕に製氷工場を作ったのを皮切りに、各地で製氷工場が開かれていったようです。
「冰果室」という形態のお店が現れたのは日本統治時代のことで、当時の「喫茶店」が茶や果物を出していたところ、台湾本土の人々の需要に応じて氷菓子やフルーツジュースなどを出すようになって誕生したとか。かつての氷菓室は友人などとおしゃべりに興じるだけでなく、デートやお見合いに使われることもあったようです。
このような氷菓室は1940〜80年代に一世を風靡し、のちにドリンクスタンドやコンビニなどが現れると徐々に数を減らしていきますが、老舗の氷菓店は今でも台湾各地に残っています。
高雄・旗山 常美冰店
高雄の山の方にある旗山という町はバナナの栽培や製糖工場で知られていますが、何より100年ほどの歴史を持つ現役の製氷工場があります。そのため氷菓店も隆盛を極めており、今でも営業を続ける老舗の氷菓店が数軒残っています。
1945年に創業した常美冰店(map)へ。現在は三代目の方がお店を切り盛りしています。
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常美招牌冰 |
常美冰店の看板商品「招牌冰」(招牌は看板の意味)。1スクープで4つのフレーバーのアイスをすくって作ったアイスと、トッピングのあんこやタロイモ、愛玉など、台湾らしさがガラスの器に集合した一皿です。
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常美招牌冰 |
お会計をしようとオーナーさんに声をかけたところ、「日本人からお代はいただきません。ワクチンを送ってくださってありがとうございます」のような一文が書かれたスマホの画面を見せられ、お代を受け取っていただけませんでした。自分は日本人とはいえ、ワクチンの件で何をしたわけでもないのに…。と心苦しくなりました。(※訪問したのは2023年夏のことですが、現在でも同様のサービスを行なっているか未確認です)
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常美冰店 |
常美冰店
高雄市旗山區文中路99號(map)
宜蘭・南澳 南興冰店
台湾鉄道に乗って東海岸を目指し、今まで降りたことのなかった宜蘭県の南澳へ。
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東北海岸を走る区間車 |
南澳はタイヤル族の集落で、海に面した自然豊かな土地です。町にはタイヤル文化館があるほか、山の方へ行くと碧候溫泉があります。
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南澳はタイヤル族の町 |
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南興冰果室 |
南興冰店(map)は60年老店と言われているので、創業はおそらく1960年代?飾り気のない店頭に佇む巨大な製氷機と、壁の白いタイル、木の蓋がはまった冷凍庫が目を引きます。
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南興冰果室 木の蓋がはまった冷凍庫 |
注文したのは「雞蛋牛奶冰」。その名の通り卵がのったアイスです。台湾でも実は生卵が使われるメニューがあるんですね。(豬油飯に黄身を絡めて食べるのもありますね)
お店によっては日本と同様に「月見冰」と呼ばれることもあります。
南興冰店のアイスはさわやかな甘みがついた清冰(香蕉冰)にトッピングをのせたもの。清冰はかき氷やアイスクリームと違い、シャーベットに近い爽やかな氷菓子です。雞蛋牛奶冰は清冰に生卵の黄身と練乳が乗ったメニュー。黄身が氷に冷やされて固まる前によく混ぜていただきます。ミルクセーキに近い感じで、思ったほど奇抜な味ではありませんでした。
南興冰店
龍都と松屋で扱うアイスはどちらも昔ながらの製氷機で作るシャーベットのようなアイスです。(前項の南興冰店と同じ)アイスの他に生搾りのフルーツジュースも売っています。
三色綜合冰を注文。店主が冷凍庫からアイスをすくい、ガラスの器に盛り付けていきます。おそらく素材の色彩そのままの、自然な色合いのアイスです。
別の日に改めて龍潭を訪れ、松屋(map)を目指します。店内のレイアウトは龍都とほとんど同じで、入り口に冷凍庫と製氷機、奥に客席があります。また、壁にはお店の歴史が書かれた解説板がありました。
三雅紅茶大王と店名にあるように看板商品は紅茶のようで、ひっきりなしにお客さんが買い求めていました。小中学生からおじさんまで、地元の人の生活の一部になっているようなお店でした。きっと台湾中のどの地方でも地元の人に昔から愛されているこんなお店があるんでしょうね。
新北市の東北海岸の小さな漁港・深澳にある「喫冰冰店」(map)。このかき氷店が面白いのは廟と一体化しているところ。
喫冰冰店ではかき氷だけでなく、甜不辣(練り物+大根・豬血糕などのおでん)という軽食も扱っていました。
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雞蛋牛奶冰 |
南興冰店のアイスはさわやかな甘みがついた清冰(香蕉冰)にトッピングをのせたもの。清冰はかき氷やアイスクリームと違い、シャーベットに近い爽やかな氷菓子です。雞蛋牛奶冰は清冰に生卵の黄身と練乳が乗ったメニュー。黄身が氷に冷やされて固まる前によく混ぜていただきます。ミルクセーキに近い感じで、思ったほど奇抜な味ではありませんでした。
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南興冰果室のメニュー |
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東澳灣 |
南興冰店
宜蘭縣蘇澳鎮蘇花路二段420號(map)
鐘石田という人物が1935年に松屋を創業し、のちに息子二人が継いで龍都氷菓室と松屋氷菓店に分店したので、両者は元々同じルーツのお店です。
鐘石田さんは日本の製氷技術を導入し、1935年に松屋氷菓室を創業。しかし第二次世界大戦の際に徴兵され負傷し退役しました。大戦中は息子の鐘元鉷さんが店を預かっていましたが、父・石田さんが戦争から戻ると、日本人の指導のもと多くの氷菓子の製法を学び、さらに多くの氷菓子を展開するようになりました。
鐘一家は1975年に松屋の裏手に当たる北龍路に龍都氷菓室を開きました。この頃は龍都と松屋の店舗は裏と表が繋がったひとつの物件だったそうです。
1981年に鐘元鉷さんと鍾元凱さん兄弟は分店し、龍都と松屋、それぞれの別個の店舗となり現在に至ります。
まずは龍都冰果室(map)へ。
ここにも店頭に製氷機と冷凍庫の姿がありました。
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龍都冰果室のメニュー |
龍都と松屋で扱うアイスはどちらも昔ながらの製氷機で作るシャーベットのようなアイスです。(前項の南興冰店と同じ)アイスの他に生搾りのフルーツジュースも売っています。
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龍都冰果室 |
三色綜合冰を注文。店主が冷凍庫からアイスをすくい、ガラスの器に盛り付けていきます。おそらく素材の色彩そのままの、自然な色合いのアイスです。
桃園市龍潭區北龍路80號1樓(map)
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松屋冰果店 |
別の日に改めて龍潭を訪れ、松屋(map)を目指します。店内のレイアウトは龍都とほとんど同じで、入り口に冷凍庫と製氷機、奥に客席があります。また、壁にはお店の歴史が書かれた解説板がありました。
ミルク、パイナップル、ピーナッツのアイス3色盛りを注文しました。
華西街珍果が扱うのはフルーツジュース(ミルク)、かき氷、カットフルーツのプレートです。
傳統雪冰(ミルク、パイナップル、ピーナッツ) |
松屋さんは壁に使われているブルーグリーンのグラデーションタイルが涼しげでとてもいいですね!木製のテーブルと椅子、石のような深緑の床タイルも懐かしい感じがします。
松屋冰果店 |
松屋冰果店
桃園市龍潭區龍元路32號(map)
台北・萬華 華西街 珍果
地元民と観光客でにぎわう台北の龍山寺エリア。アーケード商店街の華西街の一角にある「華西街 珍果」(map)は50年老店と言われる老舗氷菓室です。色とりどりのフルーツが整然と並ぶ冷蔵庫が通行客の目を惹きつける店構えで、ドラマ『華燈初上』のロケ地にもなったそうです。
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華西街珍果 |
華西街珍果が扱うのはフルーツジュース(ミルク)、かき氷、カットフルーツのプレートです。
龍山寺はおじさんの街というイメージがありますが、華西街珍果には老若男女問わず様々なお客さんが訪れます。昼間におじさんたちがかき氷をさっと一杯やっていく…、そんなカジュアルなお店です。
看板や壁紙は2023年にリニューアルされましたが、合皮の椅子や目盛りのついたガラスのコップなど、昔ながらの調度品が懐かしい気分にさせてくれます。
華西街 珍果
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目盛りのついたガラスのコップで提供されるパパイヤミルク(木瓜牛奶) |
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華西街珍果 |
看板や壁紙は2023年にリニューアルされましたが、合皮の椅子や目盛りのついたガラスのコップなど、昔ながらの調度品が懐かしい気分にさせてくれます。
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華西街珍果 |
華西街 珍果
台北市萬華區華西街113攤(map)
台湾西側の中部・雲林県北港を訪れた際に、気取らない雰囲気の素敵な氷菓室を見つけました。看板によると1981年創業の「三雅 紅茶大王」(map)。かき氷と飲み物を出す、台湾ではよくあるドリンクショップ(手搖飲料店)と氷菓室のミックスといったところでしょうか。
雲林・北港 三雅紅茶大王
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三雅紅茶大王 |
台湾西側の中部・雲林県北港を訪れた際に、気取らない雰囲気の素敵な氷菓室を見つけました。看板によると1981年創業の「三雅 紅茶大王」(map)。かき氷と飲み物を出す、台湾ではよくあるドリンクショップ(手搖飲料店)と氷菓室のミックスといったところでしょうか。
このお店を紹介したい理由は、店構えが素敵だったから。回るシーリングファン、フルーツや牛乳、かき氷のトッピングが並ぶ入り口の冷蔵庫、台湾の食堂でおなじみの銀色のテーブル…。良いものが全部集まっており、ゆるやかな時間が流れていきます。
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草莓冰沙 |
三雅紅茶大王と店名にあるように看板商品は紅茶のようで、ひっきりなしにお客さんが買い求めていました。小中学生からおじさんまで、地元の人の生活の一部になっているようなお店でした。きっと台湾中のどの地方でも地元の人に昔から愛されているこんなお店があるんでしょうね。
雲林縣北港鎮公園路63號651(map)
新北・深澳 喫冰冰店
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喫冰冰店 |
新北市の東北海岸の小さな漁港・深澳にある「喫冰冰店」(map)。このかき氷店が面白いのは廟と一体化しているところ。
喫茶店や今風のカフェなんてなかった時代、台湾人の社交の場といえば廟だったと言われています。人が集まる廟に物売りが集まり、やがて夜市が形成されて発展していく…。そんな風景を思い浮かべると、このお店は面白いなと思ったのです。
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花生雪花冰 |
喫冰冰店ではかき氷だけでなく、甜不辣(練り物+大根・豬血糕などのおでん)という軽食も扱っていました。
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甜不辣 |
喫冰冰店
新北市瑞芳區深澳里深澳路67-1號(map)
終わりに
台湾レトロ氷菓店ハリー・チェン著、中村加代子訳 |
台湾で喫茶店という形態のお店が出現したのは日本統治時代(1895-1945)だと言われています。しかし当時の喫茶店というのは女給さんが付くような高級店で、通うのも社会的地位のある一部の人たちといった具合で、どうやら庶民が憩う場ではなかったようです。
それでは台湾の庶民はどんなところで社交をしていたのか(茶をしばいていたのか)?と考えた時に、「台湾には氷菓室があるじゃないか」と考えたのですが、氷菓室自体の歴史も日本統治時代に始まり、1940〜80年代にかけて流行したスタイルとのことでした。今回紹介した中にはそれより早い1935年創業のお店もありました。氷菓室は近代から現代にかけて、台湾の庶民の生活によりそい続けているんですね。
友人と艋舺をぶらぶら。まずは1920年創業の龍都へ🍧
— amikawa (@amikawa125) July 18, 2023
100年の歴史を持つ冰果菓室。ひっきりなしにお客さんが入り、氷が延々と削られ続けていた pic.twitter.com/71Ykch7u0g
(龍潭ではなく、台北の萬華(艋舺)にも龍都という名の氷菓室があり、こちらはさらに古く、1920年創業)
では日本統治時代より前には、台湾の庶民はどこで集まっておしゃべりをしていたのか…?となると、やはり廟なのかもしれません。
台湾で年配の方に話を聞くと、
— amikawa (@amikawa125) July 23, 2024
「昔はカフェなんかなかったよ」
じゃあどこでおしゃべりとかしてたんです?
「廟だね」
という話をしてくれるんだけど、廟にこういう涼亭があれば、茶しばいて社交できるよな〜って納得した https://t.co/yYV6bXyziz
参考記事
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