ネットで観られる台湾の人文系バーチャル博物館まとめ【7館】


新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、台湾の故宮博物院はネット上で参観できる展示を発表。これが台湾好きツイッタラーの間で話題になっていました。





▶︎故宮、収蔵品や展示をネットで公開「家でも楽しんで」/台湾

博物館の展示をネット上で公開する試みは、海外の有名博物館をはじめ、台湾でも近年積極的に進められています。

今回は話題になった故宮博物院だけでなく、ネット上で参観できる台湾の人文系の博物館をご紹介します。

デジタル・アーカイブとバーチャル博物館

故宮博物院 - 明代永樂帝の青花水壺
博物館には収集、研究、展示・教育、保存などの機能があります。21世紀に入ってから、コレクションのデジタル化を進める博物館が増えてきました。

デジタル化されたコレクションは博物館のウェブサイトなどでデータベース化され、研究などに使われたり、一般の利用者も自由に参観することができるようになっています。

台湾の博物館でも、故宮博物院をはじめ多くの博物館がコレクションをウェブサイト上で公開しています。

さらに近年はVR技術やプラットフォームが整ってきたこともあり、展示室そのものをウェブサイトなどで公開する動きが徐々に起こっています。

例えば、Google Arts & Cultureでは大英博物館やオランダのアムステルダム国立美術館などのコレクションを見ることができたり、ストリートビューと同じ要領で、オンラインで展示室を360°参観できるバーチャル体験も始まっています。

今回は主に台湾の人文系のバーチャル博物館を7館ご紹介します。一部の博物館はVRのヘッドセットをお持ちの方はVRで、装備がなくてもストリートビューのように手動で視点を変えながら展示を参観できるようになっています。

故宮博物院(北院)

台北を訪れる観光客の多くが訪れる故宮博物院。デジタル・アーカイブやVRでの展示公開の分野でも、やはり台湾の博物館を牽引する施設です。


今回メディアで紹介されていたのは『720°VR走進故宮』というオンラインでの参観体験。現在中国語と英語で参観できるようになっています。

以前から展示室の3D化の公開は行われていましたが、今回はバーチャル展示の参観ルートの整備や解説などが加わり、より参観しやすくなりました。

故宮博物院の名品を巡る『精選路線』というおすすめルートでは、一部の展示品に動画による解説もついています。



Google Arts & Cultureでも故宮博物院のデジタル化された名品を高画質で見ることができます。


展示室をそのままネット上に再現したようなGoogle Arts & Cultureの『Story』では、収蔵品と解説をセットで楽しむことができます。(英語)

2020年2月現在、故宮博物院からは

The Decorative Beauty of the Tibetan Dragon Buddhist Canon
Traveling Among Mountains and Streams
Hsi-tsun
Spring Dawn in the Han Palace

以上の4つのStoryが公開されています。

典藏精選 - 明 成化
バーチャル展示だけでなく、デジタル・アーカイブの資料も充実しています。名品には解説動画へのリンクが付いています。故宮博物院はこうしたデジタルコンテンツの充実度も高いです。



故宮博物院(南院)

嘉義にある故宮博物院(南院)の展示としては、Google Arts & Cultureで、仏教美術の『The Decorative Beauty of the Tibetan Dragon Buddhist Canon』展が、Storyとして公開されています。

収蔵品と解説が展示の順番に沿って紹介されるほか、ストリートビューの要領で、ネット上で展示室内を回ることができます。

The Decorative Beauty of the Tibetan Dragon Buddhist Canon
この仏教美術の展示室には、東南アジアやチベットなどの美術品も展示されています。私の推しは6世紀〜11世紀頃にタイで栄えたドヴァーラヴァティー期のもの。台湾で観られるのは非常にレアだと思います。

ドヴァーラヴァティーの仏教美術
北院と違って、中華圏だけでなくアジア全体から見た台湾を示すような展示が多いのが南院の特徴だと思います。

十三行博物館

十三行博物館
十三行博物館は新北市にある考古学博物館。金属器時代の十三行遺跡からの出土品などが展示されています。

十三行博物館も、先日新型コロナウイルスの防疫対策として、バーチャル博物館をアピール。

十三行博物館 デジタル博物館

デジタル博物館(數位博物館)
で、3D化された展示室を自由に回ることができます。ポイントは常設展だけでなく、過去の特別展も含まれているところ。2019年以降に行われた特別展が収録されています。


例えば、2019年9月から2020年1月まで行われていた先史時代からの台湾の海洋交易をテーマにした『海上瑰寶 - 臺灣古代海路交流特展』。とても良い展示だったので、期間終了後も観られるのは嬉しいですね。



一部の収蔵品は3Dスキャンもされていて、土器などの出土品をあらゆる角度から見ることもできます。


台湾大学人類学博物館

台湾大学にある人類学博物館には、日本統治時代の台湾で収集された台湾原住民族の日用品や儀式に使われる道具などが展示されています。



特別なページがあるわけではなく、Googleマップから直接360° viewで展示室を見ることができます。

展示品は1928年頃から収集されたものなので、歴史的な価値もある貴重な収蔵品ばかり。

2015年に国宝に認定されたパイワン族の『四面木雕祖靈柱』はぜひご覧いただきたい収蔵品です。



中央研究院 歷史文物陳列館

中央研究院の史語所は特に中国考古学の研究が盛んな研究施設なので、先史時代から古代王朝の文物を数多く収蔵しています。

付設の歴史文物陳列館の『東周實相 - 河南出土東周文物展』がバーチャル展示も行なっています。

東周實相 - 河南出土東周文物展
他の展示室もGoogleマップ上で公開されています。



こちらのガイドページを参考にしながら見学するのがおすすめです。

また、この陳列室は水曜・土曜・日曜しか開放されていないので、実際に行くにはハードルが高いスポットでもあります。それがネットで観られるのは嬉しいですね。

鶯歌陶磁博物館

鶯歌陶瓷博物館
焼きものの街・鶯歌にある陶磁博物館。こちらも常設展や過去の特別展が『展場環景(展示室の風景)』のページに3D化して公開されています。VRの装備なしでもサイト上で視点を動かしながら見学できます。

鶯歌陶瓷博物館 - 2樓常設展
台湾では清代から日本統治時代に近代的な陶磁器生産が始まりました。鶯歌はその初期から焼きものを作っている歴史ある街です。原住民族の伝統的な土器も収蔵しており、台湾の焼きもの生産の歴史を知ることができます。


奇美博物館

台南にある私立博物館の奇美博物館。動物標本から西洋画、武器に楽器まであらゆるジャンルの展示を楽しむことのできる巨大な博物館です。

ウェブサイト上では『720°虛擬實境導覽』として3D化された展示室を自由に見学できます。

また、アプリをダウンロードしてVR装備をつければバーチャル空間で実際に展示室内を歩き回ることもできるようです。

装備がなくてもサイト上で見学できるようになっていました。

奇美博物館 - 正面
ギリシャ風の建築自体も見所になっています。サイト上では外観から各展示室まで公開されています。

奇美博物館 - 一樓兵器室

実際に現地へ行ったこともあるのですが、個人的に特に楽しめたのは一階の武器の展示室。世界中の剣や弓矢などを見るのが楽しかったです。

名品は『奇美精品』としてデジタル化されており、詳しい解説を読むことができます。

今回紹介したバーチャル博物館まとめ

1. 故宮博物院(北院)
720°VR走進故宮
Google Arts & Culture
-典藏精選

2. 故宮博物院(南院)
Google Arts & Culture (Story)

3. 十三行博物館
デジタル博物館
デジタル・アーカイブ

4. 台湾大学人類学博物館
Googleマップ

5. 中央研究院 歴史文物陳列館
東周實相 - 河南出土東周文物展
Googleマップ
典藏珍稀

6. 鶯歌陶瓷博物館
展場環景(展示室の風景)

7. 奇美博物館
720°虛擬實境導覽
奇美精品



今回は台湾の人文系博物館のバーチャル展示に絞って、以上の7館を紹介しました。これでも全ての網羅したとは言えないかもしれません。他にも良いバーチャル展示があれば追加します。デジタル・アーカイブだけなら公開している博物館はもっとたくさんあります。

今は新型コロナウイルスの関係で不要不急の外出を自粛中…という方はご自宅での暇つぶしに、ぜひ台湾のバーチャル博物館を楽しんでみてください!

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