現在・過去・未来のロッテルダム精神を記憶するミュージアム・ロッテルダム | Museum Rotterdam - van de stad



オランダを旅行していると、各都市の中心は中世からずっと街の中心であったことを示す教会や行政の重要な建造物が残っていることに気づきますが、ロッテルダムは他のオランダの都市と異なります



第二次世界大戦で市の中心部が爆撃を受けてしまったため、戦前の建築は街の中心には残っておらず、逆にモダンなガラスや鉄筋を使った建築が並んでいます。

ロッテルダムの中心に位置するこのミュージアム・ロッテルダムはまさに戦後のモダンな建築で、通りに面した巨大なガラス窓が特徴です。博物館内にはロッテルダムの精神「ハードワーク、イノベーション」という切り口から、時間を超えたロッテルダムの人々の姿が展示されています。


ミュージアム・ロッテルダムの成り立ち

ミュージアム・ロッテルダムは1905年にアンティーク博物館として、ブルジョワ層が労働階級の人たちを教育するための機関として始まりました。

そのころからロッテルダムの黄金期などの歴史を記憶するための”歴史博物館”として運営されていましたが、近年になって”歴史”の文字を取り払い、2010年から”ミュージアム・ロッテルダム”として、街の過去だけでなく、変化を続ける生きた都市としての姿を記憶する場所として生まれ変わり、2016年には現在の市の中心部に移転して運営されています。

ミュージアム・ロッテルダムの展示

ミュージアム・ロッテルダムの展示はロッテルダムに暮らす人々に共通する精神「ハードワーク・奉仕・イノベーション・宗教」という切り口から、先史時代から現在までのロッテルダムの人々の姿を展示品を通して語りかける、メッセージ性の強い今時らしい博物館です。

ワンフロアのみと面積は大きくない博物館ですが、常設展「HISTORY OF THE CITY」と「ROTTERDAMMERS AND THEIR CITY」のほかに、時期によって内容が変わる特別展が行われています。

私が訪れた2017年の夏には「Vrouwen van Rotterdam」という、ロッテルダムの女性に関する展示が行われていました。

2018年夏に改めて訪れた際にはホテル・ニューヨークに関する特別展が開催中でした。

BC1900年ごろ、早期青銅器時代の縄目模様の土器

BC200年ごろ、後期鉄器時代のコンロ
これはBC200年ごろ後期鉄器時代のコンロで、この三つ足の台の上に土器を乗せて海水を加熱し、塩を生産していたものだそうです。右側の丸い土性の物体は紡輪で、糸を紡ぐのに使われました。



1280年〜1300年ごろの革靴
このコーナーでは先史時代から中世、近現代に到るまでの考古学的発掘や、土地に伝わってきた展示品が並んでいました。

ロッテルダムに近いデルフトは、デルフト焼きというブルー&ホワイトの陶器で有名ですが、ロッテルダムでも近世にはタイルや食器類を製造していたようです。


17世紀ごろのロッテルダム製造のタイル

ブルー&ホワイトや銀製の食器類

絵付きのブルー&ホワイトのお皿

ミュージアム・ロッテルダムも他のオランダの博物館と同じように、大きくて開放感のあるガラス製の展示ケースを使用していたり、タッチパネル式の解説ボードが置かれていました。


タッチパネル式解説ボードは展示ケースごとに設置されていて、気になる展示品のアイコンをクリックすると詳しい解説がオランダ語と英語で読めるようになっています。


タッチパネル式の解説ボードの他に、持ち歩ける展示品ガイドも置いてありました。オランダ語と英語バージョンが用意されていて、展示品の番号ごとに詳しい解説が記載されていました。




ロッテルダムの現在を展示する


別の一角にはかつてロッテルダムを走り回っていたと思われる「働く車」たちの模型が展示されていました。世界でも有数の貿易港でもあるロッテルダムだけあって、ここに降ろされる物品の種類や数は計り知れないものであったことでしょう。

実際にロッテルダムの友人の話を聞くと、ロッテルダムの人は何かとアムステルダムに対抗心を燃やしており、労働階級であることに誇りを持ち、一生懸命働くことが美徳であると考えているように思います(当然働くのが嫌いなロッテルダム人もいるとは思いますが…笑)。





ロッテルダムの偉人や働く人々にフォーカスしたコーナー。


時代ごとに発展する港町ロッテルダムの模型。

特別展:ロッテルダムの女性展 Vrouwen van Rotterdam


2017年の夏には特別展ロッテルダムの女性展が開催されていました。現在までのロッテルダムの歴史上で重要な役割を果たした女性たちの姿が展示されています。

マネキンが時代や役職などで異なる女性たちのコスチュームをまとってポーズまで決めた状態で並んでいるので、一見デパートやショッピングセンターを思わせる展示方法でした。


展示の一角にはこのようなボードが掲示されていて、来場者が過去の女性たちに対する思い思いのメッセージを残せるようになっていました。

これは博物館が一方的に情報を伝える教育機関ではなく、来場者も展示に参加することができる、これもまた今時らしい展示方法だと思いました。

デジタル・アーカイビング

Miniatuur knobbelflesje | ミュージアム・ロッテルダムのサイトより
他のオランダの博物館同様、ミュージアム・ロッテルダムもネット上で収蔵品を公開する試みが行われています。

収蔵品の名称や年代、サイズなどの基本的な情報を調べることができるほか、画像はパブリックドメインになっているので自由に利用できます。

例えば上の画像のMiniatuur knobbelflesjeは、17~18世紀ごろの中国華南地方の焼き物だそうです。

Schepen op de rede van Rotterdam
これらのサイト上のデジタルな展示だけでも、一日中見ていられるほどの充実度です。



博物館と自分の繋がりを感じる場所

街歩きの途中で短時間だけふらっと立ち寄っただけだったので、実はじっくり展示品を見られたわけではないのが少し悔やまれます。ロッテルダムの偉人や、運河など土地の変遷の模型など、まだまだ面白そうな展示がありました。

博物館というと、一般的には古いものを展示する施設であり、ともすれば”自分と関係のないもの”ばかりがあるイメージがあるかもしれません。しかしこのミュージアム・ロッテルダムには港で働く車の模型など、地元に暮らす人たちが見て”自分と関係がある”ものが展示されており、自分と博物館の間に繋がりを感じることのできる施設だと思いました。もちろん旅行者にとっても、昔から今のロッテルダムも知ることができる施設です。

規模は大きくない博物館なのですが、先述したとおり、時間を超えたロッテルダムの街と人々の精神を展示し、現代のロッテルダムの姿を展示に反映していくというメッセージ性の強い博物館でした。



ミュージアム・ロッテルダムについて

住所
Rodezand 26
3011 AN Rotterdam

アクセス
トラムStadhuisから徒歩5分
もしくはRotterdam Centraal駅から徒歩15分

開館時間
火曜日〜土曜日:10:00~17:00
日曜日・祝日:11:00~17:00

月曜休館

1月1日、国王の日(4月27日)、12月25日は休館
12月5日、12月24日、12月31日は16:00で終了


チケット
大人 7.5€
子供 2.5€(4歳〜17歳)
4歳未満は無料
museumkaart保持者は無料

ウェブサイト
https://museumrotterdam.nl/


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