クブアのドゥヴァーラヴァティー遺跡 | Khu Bua Dvaravati Ancient Remains


クブア(Khu Bua)はバンコクから西に100kmほどのところにあるラーチャブリー県の静かな村です。ラーチャブリーの街から6kmほど南に行った場所に位置し、6〜10世紀ごろタイに栄えた仏教王国ドゥヴァラーヴァティー(Dvaravati)の重要な都市のひとつです。



当時の首都と考えられているナコーン・パトムの南に位置するこのクブアも交易の重要な拠点として栄え、大型の寺院も建設されていたことが、現在も残る遺跡から知ることができます。

私は2017年8月に実際にクブアの遺跡を見学することができたので、内容や背景を紹介していきたいと思います。

クブアの遺跡へはラーチャブリーのホテルでレンタサイクルを借りて行きました。自転車なら30分ほどの距離でした。クブアにも鉄道駅があるのですが、電車の本数が少なく、クブア到着と出発の時間も不便だったので、ラーチャブリーで自転車を借りるのは我ながら良い選択だったと思います。



クブア遺跡の背景

ラーチャブリー国立博物館にあった当時の地形を表す地図
クブアは現在では海岸線からは離れた内陸にある村ですが、1000年以上前のドゥヴァラーヴァティー期には海水面は今よりも高くクブアは海に近かったため、外部との交流がありました。

60年代にタイ美術局によって発掘が行われ、仏塔遺跡からテラコッタ製の装飾やレリーフなどが出土しました。

バンコクの国立博物館収蔵
バンコク国立博物館には、クブアで出土した重要なレリーフや仏像が収蔵されています。この5人のミュージシャンのレリーフはクブアで出土したもので、数々の書籍でも紹介されています。

同じくクブアで出土した「外国の商人」のレリーフも、当時のクブアに外国人の商人の存在があったことを裏付けるものとして重要視されています。

クブアで出土した外国人商人のレリーフ。バンコク国立博物館収蔵 

クブアの外国人商人の図。バンコク国立博物館収蔵
1965年にLyonsよって発表された論文「The Traders of Ku Bua」では、この商人がどこの国の人であったかの考察が行われています。


論文によると、大きな鼻を持ちとんがり帽を被ったこの人物はフリギア(古代の小アジア南西部の地域)ではないかと考察されています。より詳細にこの人物の服装を観察すると、ロングコートに半ズボン、そしてロングブーツを身につけています。とてもタイのような南国に似つかわしくない服装です。

この商人の出身地の明言は避けるにしても、作品の様式を分析すると、4~6世紀世紀にインドで栄えたグプタ朝や、8~12世紀のパーラ朝の様式の影響が見られる、6~10世紀のドゥヴァラーヴァティー期の作品であると考えられるそうです。


Muang Khu Bua Ancient Remains


クブアにはいくつかの大型の仏塔遺跡が残っています。ムアン・クブア古代遺跡はその中でも規模が大きい寺院の跡です。

構造は長方形で、東側に向かって階段が伸びています。階段の周囲には生活用水を貯めているのか、バライのようなものも残っているほか、階段の右手には別の建物かストゥーパが建っていたのか、何かの基礎の部分が見られます。

バライのような貯め池

案内の文字は残念ながらだいぶかすれてしまっていた

少し遠くから遺跡を望む。東に向かって階段が伸びている。その右手には別の建造物の基礎が残っている。


私が訪れた時には他に誰も見学している人はいませんでしたが、ちょうど近所に住んでいると見られるおじさんが遺跡の草取りに来ていました。以前は雑草に覆われていたこの遺跡はこの方によって手入れをされているようです。

遺跡の南面
南面は比較的保存状態が良く、柱のような構造が見られました。もちろん当時はこの建物全体に仏像や守護神などの装飾があったと思うのですが、それらはすでにバンコクの博物館やラーチャブリーの博物館に収蔵されています。

▶︎古くから交易で繁栄し、中国の陶磁器も見られるラーチャブリーの国立博物館 | RATCHABURI NATIONAL MUSUEM

よく見ると下段は石製で上段はレンガと、二種類の素材から作られている

クブア遺跡の足跡付きレンガ
この遺跡は当時のままの状態なのか、現在までに修復されたものかはわかりませんが、遺跡の頂上にこんな可愛い足跡が残っているレンガがありました。




住所:Khu Bua, ムアンラーチャブリー ラチャブリー 70000 タイ



Ancient Monument no. 8 (Wat Khubua)


大型の遺跡Muang Khu Bua Ancient Monumentの他に、このAncient Monument no.8 (Wat Khu Bua)にも立ち寄りました。自転車で移動中に先ほど遺跡で草取りをしていたおじさんとまたすれ違いました。

こちらの遺跡は先ほどよりも規模は小さめで、正方形の構造をしています。建物の周りには水は入っていないものの掘り込まれており、仏教の宇宙観に則っていることが感じ取れます。

案内板の文字がやはりかすれてしまっている

遺跡を通りに面した方向から見た図
基礎の上は、上に上がるにつれて面積がだんだん小さくなるピラミッドのような形をしています。また、正方形の一辺に三つ出っ張った部分が作られているのが見えます。



最近になって崩れてきてしまったのか、むき出しの赤いレンガがのぞいています。


一部には漆喰で表面を覆っているところがありました。当時はもしかしたら全体が漆喰で覆われた建物だったのかもしれません。

ラーチャブリーで借りた自転車とクブア遺跡


住所:Khu Bua, ムアンラーチャブリー ラチャブリー 70000 タイ


クブア遺跡はドゥヴァラーヴァティー期には重要な港町であったことが確かに感じられる大規模な遺跡が今でも残っていました。

正直なところ、公共交通機関でのアクセスは不便なので、万人におすすめできるスポットではありません。クブアに興味がある方は、まずはバンコク国立博物館と、余裕があればラーチャブリー国立博物館を見学するのが良いと思います。



タイ観光庁のサイト
BAN KHU BUA ANCIENT TOWN

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