フレヒッテ博物館で古蹟の活用について考える | Museum Flehite, Amersfoort



オランダには各地にさまざまな博物館があります。私は西洋の歴史や美術には詳しくないのですが、滞在の際にはいくつか見学するようにしています。


そこで興味深いのは、オランダの博物館は建築そのものに歴史があるものが多いのですが、内部がモダンに改装されていることが多く、古いものと現代のデザインが融合しているところを感じられることだと個人的には考えています。

アメルスフォールトはオランダ・ユトレヒト州の市のひとつで、市の中心には中世からの街並みが残っています。

2017年8月に訪れた際にMondriaanhuis(モンドリアンハウス)、Museum Flehite(フレヒッテ博物館)とKunsthal KAdE(クンスタール・カーデ)を参観したので、今回の記事ではフレヒッテ博物館について紹介します。




フレヒッテ博物館の建築

フレヒッテ博物館は1540年にBreestraatに建てられたmuurhuizen(ムーアハウゼン)を利用して、1880年から博物館としてオープンしました。

アメルスフォールトの特徴を語るには、まずは「Muurhuizen」から説明する必要があるでしょう。

オランダ語の意味をそのまま訳すと、「muur」は壁、「huis (huizenは複数形)」は家となります。



この地図の茶色の線の部分が「Muurhuizen」と呼ばれる連なった建物で、13世紀ごろのアメルスフォールトの外壁のような役割を果たしていました。

人口が増加するにつれ街も発展していきました。1380年から1450年ごろにかけて、アメルスフォールトは地図の外側の白い線(Stadsring)の範囲にまで拡大し、新たに水路や市壁がつくられました。

その後当時の「Muurhuizen」は取り壊されたのですが、現在フレヒッテ博物館になっている建物は1540年に新たに建てられたものだそうです。

1880年にフレヒッテ博物館がオープンし、当初はBreestraat 78号の建築だけを利用していたのが、1890年には隣り合う80号と76号の二館も共に博物館となりました。


フレヒッテ博物館の改修計画


アメルスフォールトの象徴とも言える、歴史のある「Muurhuizen」を利用しているフレヒッテ博物館ですが、アスベスト除去のために2007年から2009年にかけて閉館し、内部の改修が行われました。

この改修によって、隣り合う三つの建物がつなぎ合わせられたほか、展示の動線も自然なレイアウトに生まれ変わっています。

当時のニュース記事などはすでにリンク切れになっているのですが、以下のユトレヒト大学のサイトで公開されているフレヒッテ博物館の刊行物 (Kroniek : tijdschrift historisch Amersfoort)に、当時の修復の詳細が載っていました。


Raven, Gerard (2009)
Museum Flehite heropend. Kroniek : tijdschrift historisch Amersfoort
ユトレヒト大学レポジトリにて無料でダウンロード可能・オープンアクセス

Algemeen Dagblad
"Museum Flehite uit as(best) herrezen"
2018年3月現在リンク先の記事は消えており閲覧不可

リノベーション時の画像が掲載されています
https://duofor.eu/en/projects/museum-flehite


Kroniek : tijdschrift historisch Amersfoort より引用
その改修完了時(2009年)に発行された博物館の冊子には、繋がった三つの建物の立体図や、改修を担当したディレクターや建築家の対談などが載っています。

フレヒッテ博物館はBreestraat 76号・78号・80号の三つの建物を利用しているのですが、それぞれ異なる建物だったため、各階層の高さがバラバラでした。高さの問題をどう解決するかや、参観者の移動の動線をいかにシンプルにするかが課題だったとディレクターたちは語っています。

上の図を見るとわかるように、参観の動線が0のENTREEから12のJA!まで、三つの建物を横断しながら一筆書きになっています。(3が二つあるのですが、VAN CAMPENが2の間違いだと思います)参観者は階段を登ったり降りたりしながら、三つの建物内を巡ります。


私は事前にこの博物館は三つの建物が繋がってできていることを知らない状態で見学したのですが、歩いていても一切の違和感を感じませんでした。ただ、階段の上から見ると、横手に見える部屋が大きなガラス張りになっているのがオランダの現代の建築っぽいなと感じました。

吹き抜けから下の階を見下ろす
建物のつなぎ目はこのように吹き抜けになっており、開放的な雰囲気があります。また、色も白なので圧迫感がなく、洗練されているように感じました。

建物のつなぎ目の部分は、現代らしさを感じるガラス張りになっている

屋根裏の木造の梁が残されている
リノベーションの際に新しく足されたガラス張りの仕切や金属製の階段と、16世紀の木製の梁が同時に存在する、古いものと新しいものが混在する様式になっています。

昔は暖炉だったところ
改修することによって、内部を全て現代のもので上書きするのではなく、あえて当時の状態を残しているところもありました。

当時暖炉だったこの壁は、炭の跡がそのまま残されています。当時の人々の生活の痕跡が、この建物がもつ歴史を表しています。

フレヒッテ博物館は中世の外観を持ち、内部は当時のものを一部に残しながら現代のデザインに生まれ変わっています。

古蹟や文化遺産の保存は、一切の変化を加えないのもひとつの方法ですが、このように現代のテイストを加えていくというのも、「私たちも歴史の一部」だということを感じられて素敵だと思いました。



フレヒッテ博物館の展示品

フレヒッテ博物館は1850年から1950年の間の美術品を展示しています。主にアメルスフォールトの歴史や産業に関係するものや、アメルスフォールト出身の画家の作品が中心となっています。

Sint-Joriskerk (教会)の模型

Sint-Joriskerk (教会)の模型



私は西洋の絵画は全く詳しくないのですが、このような風景画を見た後にモンドリアンの作品を見ると、芸術に世界で大きなパラダイムが起こったということが感じられました。

ビールを汲むための木製の柄杓

アメルスフォールト産のビール瓶






Museum Flehiteについて


開館時間
11:00-17:00
月曜休館
※12月の祝日は開館が16:00までに短縮、国王誕生日や大晦日などは閉館

チケット料金
大人12ユーロ
学生5ユーロ
18歳以下やMuseumkaart所持者などは無料


住所
Breestraat 80
3811 BL Amersfoort
アメルスフォールトの鉄道駅から徒歩15分程度

公式サイトおよびSNS






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