スリナガルへの道中で見かけたレストランの少年店員の話


2015年の夏、私はインドのラダックを訪れていた。

ラダックのレーへはデリーからダラムサラ、マナリとバスを乗り継いで来た。



レーで数日を過ごし、次の目的地ジャイプールへと向かう足を考えている際に、旅行会社に手配してもらった航空券がスリナガル⇨デリー⇨ジャイプールだったのだ。

夏は観光のハイシーズンであるレーの空港よりも、スリナガルから飛んだ方が航空券が安いらしい。こうして私はまずはスリナガルへ向かうことになった。

その旅行会社はレーからスリナガルまでの乗合タクシーも手配してくれた。



スリナガルはレーから車で12時間ほどの距離だ。タクシーといっても10人ほど乗れるミニバスのようなもの。料金は2000ルピーで、主に地元の人が利用する足のようだった。

17:00にレー市街から少し離れたタクシーステーションを出発。車内は地元の人が好む演歌のような音楽で盛り上がっていた。

街灯も少なく、舗装もされていない山道、星がきれいだったのを覚えている。

何時頃だったか、途中夕食の休憩を挟んだ。家や商店などが集まっているエリアのとあるレストランの前で停車し、乗客は皆、食事休憩しに降りていった。

そのワンシーンがこの写真。

印象的だったのが写真では背を向けているグレーのTシャツを来た少年だ。

少年はこの小さなレストランが彼のステージであるかのように、何度も軽やかに厨房から料理を受け取りテーブルへ運んでいった。

その動き一つ一つがダンスのようだった。

ステップを踏み回転を入れ、ポーズを決めるなど、少年の動きには彼の美学が現れているようだった。

年齢は10代半ばくらいだろうか。ちょっと格好つけたい年頃なのかもしれない。

他の店員は年上ばかりだが、少年の軽やかな動きは他の店員のそれとは一線を画していた。それでもみな、楽しそうに仕事をしていた。

私にとっては旅の途中でたまたま立ち寄った、名前も知らない村のとあるレストラン。

それは私がいま台湾で暮らしているこの瞬間にも存在していて、少年は今日も軽やかにあのレストランのテーブルの間をかけまわっているのかもしれない。



翌朝8:00に、タクシーはスリナガル市街へ到着した。




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