アンコールの前身と言われるピマーイ歴史公園 | Phimai Historical Park


タイの東北部にあるピマーイ歴史公園は11〜12世紀に建てられた大乗仏教の都市ですが、ヒンドゥー教のアンコールの前身とも言われており、建築様式や装飾物にもヒンドゥーの特徴が見られます。



1080年にアンコールの正式な王として即位したジャヤヴァルマンⅥ世は、ここピマーイ周辺のコラート地方を治めるマヒーダラプラ家の出身でした。また、その兄も後にダーラニンドラヴァルマンⅠ世としてアンコール王を継いでいます。ヒンドゥー教のアンコール王朝において、大乗仏教を信仰するマヒーダラプラ家は、コラート地方においても多くの建造物を残しています。

私がピマーイ歴史公園を訪れたのは2016年8月のことですが、その翌年に大学院でインドの都市建築についての講義を履修しました。

その際の指定図書が布野修司の『曼荼羅都市:ヒンドゥー都市の空間理念とその変容』でした。この本では古代インドの政治や経済について記された『アルタシャーストラ(実利論)』の都市建築の概念を踏まえて、インドと東南アジアのインド化都市について分析を行なっています。その中の一節でピマーイにも触れ、寺院の配置について解説しています。

今回の記事の大部分は上記の布野修司の『曼荼羅都市:ヒンドゥー都市の空間理念とその変容』と、現地で入手したパンフレットを元に執筆しています。


歴史公園は毎日7:30〜18:00まで開園しており、外国人の入園料は100バーツ。付近には博物館もありますが、そちらの開館時間は16:00までなので、もし参観を考えているなら時間配分に気をつけながら見学しましょう。



歴史公園へ入るとビジターセンターがあり、日本語で書かれたパンフレットを入手することができます。城内の建築についての簡単な説明が載っているので入手することをおすすめします。

歴史公園内部

アルタシャーストラに記されている”理想的な都市”を再現するかのように、ピマーイの代表的な寺院であるプラサート・ヒン・ピマーイは長方形の外壁に囲まれており、四方に門と、4つのバライ(水池)、経典を納める図書館や僧院が建てられています。

参道の向こうには中央祠堂が見える
歴史公園の入り口を入ってすぐの石畳の参道を歩いた先には四つの石で囲まれた窪みがあり、さらにその先に中央祠堂が見られます。

建築群は長方形の外壁カンペン・ケオと内壁ラビアンコト内に配置されています。アルタシャーストラの記述通り、内壁の四方には出入り口が設けられ、空間を四分するように通路が走り、中央には祠堂が配置されています。

中央祠堂

寺院の様式はアンコールのバプーオン様式といわれるもので、石積みの胴体部分の上に立体的な山のような装飾があります。ロッブリーのヒンドゥー寺院と同じような、石の柱が並ぶ窓枠の飾りも見られました。




IMG_3269
内壁ラビアンコト(128m x 100m)の内部

内壁ラビアンコトの内側には芝生が敷かれていますが、この部分は仏教都市の宇宙観では海と考えられていたり、外壁カンペン・ケオの外側は神々が住む天界と考えられているなど、建築物の配置にはインドの宇宙観が反映されています。

またピマーイに見られる他の遺跡と異なる特徴として、基本的には寺院は東向きで建てられるのですが、ここピマーイは南向き、それも軸を西に20度ずらした方角を基準に建てられています。その理由はアンコールの都市に向かっているとする説があります。


ヒンドゥー教の寺院によく見られるリンガの台

ピマーイは大乗仏教の都市ですが、リンガやシヴァ神像もあり、ヒンドゥーの要素も混在しています。

貴重な像などは近くのピマーイ博物館に収蔵されています。博物館にはリンテルや像などが多数展示されており見応えがありました。博物館については別記事で紹介しようと思います。


この頭飾りの形はクメールの装飾や像などでもよく見られる

生活用水を貯める池

ピマーイ歴史公園への行き方

バンコクからピマーイ訪問の拠点となる東北部の都市ナコン・ラチャシーマー(別名コラート)へのアクセス方法についてはこのサイトにまとまっている(英語)ほか、日本語のブログでも参考になる記事がいくつかみつかります。

バンコクからバスで向かう場合は、バンコクの北バスターミナル『モーチット(Mo Chit)』からバスが出ており、所要時間はおよそ4時間です。ナコン・ラチャシーマー到着時はおそらく郊外の第二バスターミナルでバスを降りることになると思います。

ピマーイ歴史公園へはナコン・ラチャシーマー Nakhon Rachasima(コラート)からバスが出ています。二つあるバスターミナルのどちらからもバスが毎日数本出ているようですが、私は街中にある第一バスターミナルからバスに乗り、第二ターミナルで乗り換えたように記憶しています。バスターミナルについたら「ピマーイ」と連呼していれば現地の人が案内してくれたので無事にチケットを購入することができました。ターミナルからおよそ一時間ほどでピマーイへ到着します。バスをおりたら歴史公園はすぐそこなので迷うことはないでしょう。




参考文献

布野修司(2006)『曼荼羅都市:ヒンドゥー都市の空間理念とその変容』京都大学学術出版界.


ナコン・ラチャシーマーで泊まったゲストハウスの記事はこちら:
ピマーイ歴史公園訪問の際に泊まったM IN KORAT SERVICE APARTMENT




当ブログの文章・画像の無断転載を禁じます。

ask.fm





ナコーン・ラチャシーマーのホテルを探す
Booking.com

コメント